低周波音とは20111030


 低周波被害についてネット掲示板などを見ていると、被害者に対して「あなたにしか聞こえてないんですね。精神状態が変なんでしょう。精神科に行くべきです。」とか「それは耳鳴りです。」「低周波音は聞こえないものです。気のせいです。」という趣旨のレスが散見され、誤解を受けないように状況を発信することの難しさを感じています。

 ヒトの聴覚の可聴域は約20Hzから2万Hzで、一般に日本では低周波音は100Hz以下の音とされています(ピアノの最低音は27.5Hz)。このうち、20Hz以下の音は聞こえない音とされ、超低周波音とも呼ばれています。低周波音被害は汐見文隆氏によると40Hz以下の低周波音より生じるそうですから、聞こえにくい音ではあるものの聞こえない音とは言い切れません。「聞こえる」「聞こえない」という言葉を教条的、硬直的に使うことを避けるべきだと思います。
 低周波音に対する感受性は個人差が大きく、同じ状況下でも被害症状を呈する人とそうではない人がいるのが問題を複雑にしています。また、職場で能動的に仕事をしている場合と、自宅の居間で寛いでいる場合とでは低周波音感受性に大きな違いがあるようです。このような状況については汐見文隆氏が著書の中で詳しく記述されておりますが、氏も一挙に低周波音に対する知見を得たのではなく、「調べるにつれて判ってきた。時間が掛かった。」と仰っており、被害を起こす低周波音周波数の範囲が氏の著書の中でも事例を重ねるうちに変化しております。
 
 梵鐘の音は「一里鳴く、二里響く、三里渡る」と言われますが、これは可聴音と可聴低周波音と非可聴低周波音の違いを的確に表現しています。すなわち、可聴音は距離と共に弱まりますが、非可聴低周波音はなかなか減衰することなく、遠くまで響きます。 この低周波音の発生源には、住宅に隣接する工場や店舗の機械、空調機、冷凍機などがあります。また、車のアイドリング、公共工事の重機、マンション建築工事なども低周波音被害の原因となります。そして、近年、エコキュート普及により、閑静な住宅地にも被害者が出現することになり、また風力発電でも、各地で被害者が出て、その問題性から風力発電所の設置反対などが報道され、低周波音被害が世に知られることになりました。

 世の中、静音化という、可聴域の騒音を超低周波音域に押しやる技術があり、さらにエコキュートやエネファームの普及で、低周波音が住環境に蔓延しつつあります。また、高気密・断熱住宅の建築により、屋内は遮音性が高くなり、外界の普通の騒音は聞こえなくなりますが、低周波音は減衰せず住居の中に侵入し、低周波音の影響が顕在化していき、長時間、自宅で過ごす高齢者、乳幼児や主婦等が低周波音に曝され、その犠牲者となる可能性があります。
 30年前、まだ、花粉症発症率が少なかった時代から、今や、国民病と呼ばれ、季節には多種多様な花粉症グッズが店頭に並べられる時代になったように、低周波音に曝され続ける人たちが増えて、いずれ大きな社会問題になるのではないでしょうか。

 環境省は、やっと昨年(2010年)、風力発電施設から発生する騒音・低周波音について調査をはじめ、まだまとまった見解は出ておりません。そのような中で、音響技術者や風力発電研究者の中には、低周波音被害について「聞こえない音で、健康被害は起こらない」と断定的に主張する人々もいます。聴覚的に聞こえないということで低周波音の害の有無を語るのは科学的に奇妙であり、低周波音の影響について医学的に研究してこられた汐見文隆氏の知見を無視し、多くの人の身体状況や健康について断定的に語る資格は彼らには無いはずです。  私の体験記で述べましたように、エネファームが稼働して、わずか2か月半で、家族3人のうち2人が、それぞれ体重の11〜13%を失うことになりました。ほかに原因は考えられません(電柱のトランスの発する音などについても調べた結果です)。そして、転居して、すぐに元気を取り戻し、徐々に体重が元に戻っていくことについて、医師ではなく、工学専門の方たちが、低周波音の影響ではないとなぜ断言できるのでしょう。「気のせい」だけで、このようなことが生じるのでしょうか。被害者は家を持ちながら、その家には住めずに家を捨てるか、あるいは生活を投げ打って闘うより他に方法はなく、その被害者を更に鞭打つような言動は慎んでもらいたいものです。利権や研究費獲得の思惑が絡んでいるのなら、恥ずべき行為だと思います。
 低周波音被害という言葉は、風力発電に関するニュースで記憶にありましたが、これほど深刻なものだとは思いもよりませんでした。汐見文隆氏の著書のタイトル:「わかったら地獄」そのものです。