2016年9月7日 「風力発電の被害を考える会 わかやま」から、以下の案内がありました。
   ・「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討委員会報告書(案)」に対する政府交渉
   ・2016年9月14日 14時から15時30分 於参議院会館B107号室
 
 9月14日はぎりぎりまで迷った後、参加しましたが、急な集会にも関わらず、北海道、新潟、茨城、東京、東伊豆、京都、兵庫、愛媛、山口、和歌山と33名の参加がありました。
集会には、岡田健氏、山本節子氏が出席され、その詳細は、山本節子氏ブログを見ていただきたいと思います。
 管理人は、政府交渉の後、所用で退席したため、その後の岡田健氏の貴重なお話しを聞き逃しましたが、報告書(案)に対し、厳しい意見を述べられたようです。専門家のみが知りうる裏話が興味深いものだったようで、また、機会あれば、岡田氏からお聞きできればありがたいと思います。

 環境省の風力発電に関するパブリックコメントを管理人は締切ぎりぎりで、提出しました。山本節子氏の檄がなければ、とても書く気力はありませんでしたが、家庭用給湯器の被害者の立場から、書いてみました。

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 (パブコメは2000字以内でしたので、書き足らない所を加筆し、図、引用文献を追加しました。)

 私は隣家に設置された家庭用給湯器の被害者で、超低周波音である12.5Hzで不眠症状が起こり、自宅には住むことができず、避難生活を送っている。被害者の立場から、意見を述べてみたい。

 由良町の民家で計測器NA-18Aで測定したデータでは、風車が回ると2Hz、3.15Hz二つの周波数が突出し(図2)、それが長時間、持続する(図1)。これを卓越周波数といい、この人工的な音は自然界では起こりえないものである。風が止んで風車の回転がなくなると、卓越周波数は消滅し、なだらかな周波数スペクトルとなる。私は現地でも測定しているが、これは被害者の方が測定して、私が周波数分析を行ったものである。この日は、たまたま、20時頃()から風が弱まり、0時過ぎには風車が回転を停止した()。
 風車の稼働後、この地域の住民に健康被害が生じ、ふすまや窓、床が振動するようになったのなら、この本来は「ないはず」の卓越周波数が原因ではないかと疑いを持つのは当然のことである。それを、不確かな根拠で、低周波音被害を否定することなど、ありえない。この健康被害が単なる「思い込み、気のせい」で、多くの地域の風車被害者が大きな犠牲を払って避難するだろうか。一体何のために、わざわざ金銭的負担を負って、避難する必要があるのだろう。検討委員会の委員は被害の実態を知らないからこそ、このような報告書(案)を作ってしまうのだ

私の健康被害は、騒音ではないことははっきりしている。自治体職員が当方自宅に訪れ、室内の余りに低い騒音値に驚いていた。日中でも静かであり、そして、それ以上に静かな夜間に、眠れない私の被害が騒音被害であるわけはない。風力発電の被害者の健康被害も、騒音ではなく低周波音によることは、一目瞭然(一聴瞭然)、現場に行けば、わかることである。(なお、私は、被害者であり、風車の是非を問う立場ではないので、あくまで被害未然防止についてしか意見は言うつもりはない)

 西名阪自動車道高架橋の低周波音被害では、環境省は低周波音被害について多くの知見を得ているが、調査に関わった武田真太郎氏は
  「比較的小さい音圧レベルの超低周波音の人体に及ぼす影響を取り扱った研究は少なく、とくに日常生活の中
   での長期間暴露の問題にアプローチした基礎的研究は皆無に等しくて、不明の点が非常に多い。」
  「生活環境の低周波騒音が現実に健康障害をもたらしていると考えられるので、そのような人体影響を的確に
   握することのできる診断方法の確立、・・・・反応機序の解明のための実験的研究や疫学調査や、今後、 より一
   層積極的にすすめられ、その成果が早急に集約され、体系づけられることを期待したい。」と述べている[1]。 

 それから、約30年後の2012年、加藤修一氏の国会質問主意書に対する答弁書で環境省は「一般環境で観測されるような低周波音の領域では、人間に対する生理的な影響は現時点では明らかとはなっていない」とし、長年、この被害についての研究がなされていないことを認めている。そして、風車は移動音源だから、参照値は適用しないという、こじつけのような過去の姿勢を変え、今度は、「低周波音の影響はない」とし、環境省はついに低周波音に背を向けたように見える。

 
 参照値は、長期暴露ではなく短時間の実験で、「もし、こういう状況で、この音を聞けば、気になるかどうか」という、仮定の上で、しかも被験者の想像に基づく方法で、ごく少数の被験者実験で策定されてしまった。参照値は低周波音被害の解決に役立つどころか、被害者は参照値の壁により、被害から脱出することができなくなった。今回の検討委員会には、医学関係者として佐藤敏彦氏が含まれているが、佐藤氏は参照値策定のための委員会の委員でもあった。まともな科学者であり、医学の専門家であるならば、このような参照値に異を唱えていたはずである。
 大橋力氏は「聞こえないはずの高周波音が癒しの効果を持つ」(耳ではなく、体表面に受容器がある)ことを明らかにし、聞こえない低周波音については、その危険性を指摘している。大橋力氏の研究に端を発する国立精神・神経医療研究センターの本田学氏を委員とし、低周波音の研究を始めてほしいと願う。本来なら、大橋氏のような反対の立場の委員を加え、その上で、議論されて初めて、よい案が生まれるのではないだろうか。少なくとも、佐藤氏を委員から外し、臨床医を含む医学関係者を複数いれるべきである。

 「睡眠障害は起こすものの、健康被害は起こさない。」について

 北大教授松井利仁氏は「低周波音では、中・高周波音と比較して、知覚すること自体で入眠障害につながるリスクが高い。入眠障害を含む睡眠障害が健康被害に密接につながっていることは公知の事実」[2]としている。
 「睡眠障害が健康被害に密接につながっていること」について私の体験を述べる。

 低周波音の影響として、不眠がまず挙げられるが、私も眠れない日々を送った。機械が稼働を始め、その翌日より、まったく眠気というものを感じなくなり、疲れ切って椅子に座ったまま、いつの間にか眠り、2、3時間後、目が覚める日々が続いた。不眠状態がいつまでも続くはずはないと思ったものの、いつまでたっても眠れず、2週間後、心療内科で睡眠薬を処方してもらった。不眠状態の間、家では闘争的気分となり、機械所有者に危害を加えたい、機械を破壊したい衝動に駆られ、外では絶望感から死を願望するようになった。そのうち、動悸やしびれ、胸の痛みがおこり、疲労から転倒し、肩関節亜脱臼を起こし、逆流性食道炎や出血性胃炎となり、強烈な胸やけと胃痛を味わった。体重は2か月半で7kg減少し、自宅を離れることを決意した。それから、6年、まだ自宅には戻れない。
 私の被害は参照値では認められないが、私の受けたストレスはどれほどのものだったか。「キラーストレス」は「ストレス反応の暴走」を人体に引き起こし、脳細胞や血管を破壊して、人を死に追い込むという詳細なメカニズムが明らかになっ
[3]おり、私は低周波音により拷問を受けたも同然だと今さらながら思う。そして、多額の費用をかけて、自宅から逃げねば、自分たちの身の安全は守られなかった。
 低周波音被害者である私には、風力発電被害者の地獄の苦しみが理解できる。

 欧州環境局は、20
131月、新たな技術に潜むリスクの「早い段階での警報」に、適切に対応することを促す報告書を発表した。 リスク評価では『有害であるという証拠はない』を『有害でないとの証拠がある』と誤解してきたことを反省し、不確実性を広くとらえるよう求めている。」
 風力発電についても、慎重に判断をしてほしい。


[1]物理的・化学的障害 (内科セミナー) 単行本 1981/11 織田敏次 永井書店
[2]騒音制御工学会論文より 
[3]http://www.nhk.or.jp/special/stress/