丸山覚市議 質問 高崎市議会 平成24年12月定例会(第5回)
                        −12月04日-03号
 18番 116〜より管理人要約

丸山覚市議。 
 騒音は騒がしい音だが、騒がしくない音(低周波音)による苦情が近年急増し、社会問題になっている。発生源には送風機、高速鉄道トンネルやヘリコプター、ボイラーや空調機、風車などがある。低周波音問題は1965年代より建具のがたつきの苦情から始まったとされ、苦情件数は2000年以降急激に増加し、年間120件を超える。発生当初は工場、事業場が最多、2000年以降は家庭生活に関する苦情が多く寄せられている。苦情の特徴も時代とともに変化し、物的苦情(建具のがたつき)が減少し、心身にかかわる苦情(頭痛・いらいら等)に変化している。家庭生活に関する苦情の発生源として近年問題となっているのがエコキュートやエネファームであり、いずれも環境面の優位性やエネルギー効率の高さから国、自治体も積極的に推進しており、ランニングコスト面から消費者に人気がある。
 2009年7月、市に次のような声が寄せられた。「エコキュートの低周波音被害で毎日苦しめられている。高崎市環境部に何度も相談しているが、結果的に近隣同士のトラブルで中立ということで、実質的に何も進まない。そうしている間にも私の身体の内部から毎日、毎日少しずつ人間が壊れていく。家族にも被害が出始めている。このままでは人生をどう生きていったらよいか見通しが立たたない。助けてください」。
まず、環境基本法では低周波音は騒音の範疇になっているが、騒音と低周波音の違いを説明してほしい。また、本市では低周波音に関する苦情はどれくらいあるのか。

環境部長
 騒音と低周波音の違いは、騒音が一般的に騒がしく、不快感を起こさせる音、何かをしようとすると障害になる音であることから、低周波音の中で音として聞くことができる部分で不快感などが生じている場合は、これも騒音の範疇に入ってくると考えられる。市へ寄せられている低周波音に関する苦情の件数は、2009年度から現在までに環境部へ5件、消費生活センターに2件。低周波音苦情は個人の感覚的な被害を訴えるものが多く、気分がいらいらするといった心理的影響や頭痛や耳鳴り、圧迫感などの生理的影響を与えるものであることから調査等を行ったが発生源の特定ができない、または発生源が特定されても具体的な対策が難しい苦情となっている。

丸山覚市議
 音の大小は鼓膜にかかる空気の圧力変動の大きさ、音の高低は鼓膜に伝わる振動回数で、多ければ高い音として、少なければ低い音として聞こえる。低周波音は、振動回数が少ない、すなわち波長が長いので、一般の音に比べ塀等による回折や遮蔽による減衰は小さく、一般的な騒音対策技術による伝搬経路対策を講じることが困難である。被害の表現では、音圧(dB)が大きければ、騒音はやかましい、低周波音では苦しいとなる。また、防音対策は、騒音に有効な対策、耳栓、遮音壁、締め切る、防音室化、こういった騒音に有効な対策が低周波音では逆効果となる。
 次に、2011年7月上毛新聞にエコキュートで不眠、高崎の男性、メーカーなど提訴とあった。高崎市に相談していた市民が裁判に至った経緯を市はどのように把握されているのか

環境部長 
 2011年5月に苦情相談を受け、市では苦情者及び発生源側である所有者、住宅メーカー、給湯機器メーカーへの聞き取り調査、状況確認のための現地調査及び測定を行った。そして発生源側へ測定結果の報告をしたが、環境省で手引き書に記載されている参照値以下の結果であったが、相手方に参照値以下であっても影響を及ぼす可能性がないとは言い切れないと説明をし、機器の移設等の検討をお願いした。しかし、発生源側から移設等は難しいとの回答を受け、これまでの双方のやりとり及び法令により規制を受けるものでないことなどから市としてはこれ以上の対応はできないと判断し、同年8月に苦情者に対し双方での話し合い、または県の公害審査会などの調定によって解決を図ることを勧めた。同年9月に県の公害審査会による調定となりましたが、不調に終わった旨を県のほうから聞いた。その後、2011年7月に住宅メーカー及び給湯機器メーカーを提訴、また2012年7月に低周波音規制に関する国家賠償訴訟を提訴したことを、報道により知った。

丸山覚市議 
 機器の移設等の検討をお願いしたが、発生源側から移設等は難しいとの回答を受け、現状では法令等による規制がないためこれ以上の対応ができないと判断し、県の公害審査会を勧めたが不調になったと。相談者は2011年7月住宅メーカーと給湯器メーカーを提訴、2012年7月に国家賠償訴訟を起こしたことを報道で知ったという答弁であった。
 低周波音であるかどうかの判断は複雑であると聞いている。まず、苦情の申し立ての内容の把握、現場の確認を行い、次に低周波音の測定、測定された低周波音の評価を手引き書に基づいて職員が行うのであるが、測定機器を高崎市は所有しているのか、また正確な測定、評価のためにどのように努めているのか、また一番大切な対策の検討や対策の効果の確認はどのように行われているのかお答えをいただきたい。

環境部長 
 現在、低周波音測定器を、市は所持していない。測定が必要となった場合には県所有の測定器を借用する。測定や評価は、市としては環境省、県、日本騒音制御工学会等が実施している研修会に職員を参加させ正確な測定評価ができるように努めている。対策の検討や効果の確認については、聞き取り調査や現地調査、測定等の結果から苦情者ができる限り納得できるような対策を検討しているが、低周波音の性質から防音対策は難しく、機器の移設なども双方の折り合いがつかないと対策の実現が難しいのが現状である。
 低周波音対策については、現在製造物責任訴訟により給湯機器メーカーが低周波音規制に関する国家賠償訴訟により国が提訴されている状況である。今後新たな規制や対策等が示されることも考えられることから裁判の状況や国の動きを注視していきたい。

丸山覚市議
 担当職員など実際に測定に携わる人の研修をしっかり力を入れていただきたい。それから、評価で用いる参照値に関して論争があるが、参照値が現実の低周波音による被害者をさまざまな相談段階や救済手続において切り捨てる役割を果たしている。現実の低周波音被害者は、参照値付近ないし参照値以下の音圧を示す低周波音によって被害を受けている。
 環境省は、2008年地方公共団体の騒音振動担当者に対して、参照値は苦情申し立てのあった場合に低周波音によるものかどうかを判断するための基準ではなく、目安として示したこと、低周波音に関する感覚については個人差が大きく、参照値以下であっても低周波音を許容できないレベルである可能性が10%程度残されているなどを管轄の市町村及び関係者へ周知徹底するよう依頼をしている。本市は「参照値以下であっても影響を及ぼす可能性が少ないと言い切れない」といっているが、「可能性が少ないと言い切れない」というよりも、「可能性がある」という方が適切な表現だと思う。くれぐれも誤りがないようにお願いをしたい。
 ここ二、三年の間に国の公害調整委員会に継続した低周波音に関する健康被害にかかわる裁定申請事件において裁定に至った事案は全て申請が棄却されているか、申請人自らが申請を取り下げている。双方の主張がかみ合わず、解決に至らないケースが多くなっていると答弁にもあるとおり、調整役としての市が関与しても、解決が図られないケースが多いのは事実である。今後の裁判の状況や国の動きを注視することはもちろんだが、「高崎市は、市としては今後も問題解決に向けてできるだけ尽力していきたいと考えているところです。」という回答であるが、高崎市ができることはないか。
 低周波音による被害があるというこの事実、これをまずきちっと市民に向け情報発信することが大切であると思う。当事者間の話し合いであっても、それはあなたの個人的な問題とされては解決の糸口がつかめない。機械側からすれば、電源を入れっ放しの長期間稼働する機械は、人が安らぐ場において低周波音症候群を引き起こす危険性があるが、人間からすれば、個人差などと人の資質が問われることが多いようであり、、機械の資質を問いただしたい。長野県では、環境影響評価技術指針マニュアルの中で低周波音について触れ、騒音・振動・悪臭の出前講座において低周波音について周知を図っている。
 また、川崎市では低周波音の発生源や影響、対策などをHPで啓発をしている。低周波音被害については、大型公共施設や大工場からだけでなく、近隣騒音の被害も増加しており、当事者間の低周波音被害に対する認識の不足が問題を深刻化させている一要因となっている。高崎市環境白書や環境基本計画などにも低周波音の記述は全くない。よって、低周波音被害について周知を図る必要があると考えるが、どうか。

環境部長 
 低周波音やにおい等、法的な規制がない苦情への対応は、苦情者への聞き取り調査や周辺地域の調査等を行い、とにかくまず現場に行ってみるということを優先した上で、発生源が特定できた場合は原因者に対し、苦情発生の状況を伝え、対策等をお願いしている。市が苦情者、発生源側の間に立って調整役として苦情の解決が図られるよう努めているが、最近は双方の主張がかみ合わず、解決に至らないケースが多くなっている。今回の苦情についても発生源側である所有者、住宅メーカー、給湯機器メーカーへの説明、問題解決への検討をお願いしたが、主張がかみ合わず、県公害審査会など調停機関の活用を勧めた。低周波音苦情は単にうるさくて迷惑をしているというものではなく、頭痛や耳鳴り、圧迫感などの生理的影響を訴えるものであることから苦情者の切実な思いは察するが、法的規制がないことなどから市の対応としては、発生源側へのお願い、双方の調整に努めるところまでが限界というのが現状。問題となっている給湯機器はエネルギー効率がよく、地球温暖化対策として全国的に設置が推進されているが、低周波音による苦情も現実問題として発生しており、設置者側が低周波音苦情の発生源となる可能性があることを、市民にも認識してもらう必要があると考える。市のHPへの掲載などによる周知を検討していきたい。

丸山覚市議 
 政府・地方公共団体が個別問題の解決に積極的な役割を果たすことが求められている。環境分野では予防原則(予防的取り組み方法)の考え方がある。環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも規制措置を可能にする制度や考え方である。憲法第25条では、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し、国は、すべての生活部面について・・・公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」国は、低周波音の健康被害対策について必要かつ十分な予防及び防止の抜本的な対策をとるべきである。国による対策を加速させるために複数の国会議員を通じ、この問題への対応を強くお願いしたい。家庭部門から排出される温室効果ガスの排出の抑制を図ることを目的に、国や自治体の後押しもあって機械の普及は急速に進んでいる。一方、被害者は低周波音の心身への苦痛とともに、被害が認知されていない現状に苦しんでいる。高崎市当局にはこの点を理解し、できることを極力対応していく姿勢をお願いしたい。速やかに実行してほしい。