エコウィル 1        (20130503)



 エコキュートやエネファームに並ぶエコ給湯器であるエコウィルは、発電時排熱の有効利用より、CO2排出量が少なく環境に優しいという事が売り文句であり、過去に「省エネ大賞」などを受賞している。

 カタログによると発電ユニットの騒音レベルは43dBであるが、これは無響室での計測によるものであり、注には「運転音は、実際には据付した状態では周囲の騒音や反響等の影響を受けます。」とある。現場では無響室における騒音レベルよりも平均7dBほど上昇すると言われるが、エコウィル被害者の敷地境界で自治体が測定したところ、52dBとなり、カタログ数値より9dBも高くなっていた。
 騒音レベルについてカタログ数値はこのように実際の数値より低い、無響室の数値が記載されているが、住宅施工会社の設計者はカタログの数値を盲信し、現場で騒音レベルが高くなることを全く知らないようで、「図書館並みの静けさです」と説明する。住宅地における夜間の騒音の環境基準は住宅地で通常45dBであり、このような機器を敷地境界近くに置くことがまずは問題であるが、残念ながら、一部の建築設計者にはこのような一般常識がないものと思われ、各地でトラブルが続出している。
 
 またカタログの仕様では、低周波音については全く触れられることがない。しかし、この「静かな音」である低周波音は、深刻な問題を近隣に引き起こす。
 従来の給湯器は、湯が必要な時にのみ稼働するが、エコキュート・エネファーム・エコウィルはともに大きな貯湯タンクを持ち、長時間連続稼働を行う。そのために、従来には問題にならなかった低周波音が長時間、発生することになり、近隣の住人がその音にさらされ、健康被害を生じることになる。 
 グラフ(上) 某自治体がエコウィル被害宅で低周波音を測定したがそのデータをもとに管理人が作製したものである。
 K県自治体は、被害宅で計測された低周波音の音源がエコウィルであり、その健康被害は31.5Hzによると断定している。 このグラフには、63Hz、31.5Hz、16Hz、8Hzと、周波数が順に半減しているピークが見られる。
 静音化とは「騒音を耳に聞こえにくい低周波音領域に追いやる」技術である。そして3Dグラフ(中)にあるように、このピークは稼働中、ほぼ一定の音圧で長時間、持続する。グラフは9時から9時40分までの計測であるが、一日14、15時間、この低周波音は常に発生している。驚くことに、エコウィルの低周波音は、洗濯機の脱水とほぼ同じ音圧レベルで酷似している。 市被害者宅の隣家エコウィルは朝6時から20時まで一日十数時間、連続して稼働しており、被害者は洗濯機の脱水が半日間以上、続いているような環境で数年間過ごした。次第に体調不良に悩まされ、原因に気付いたのは3年後である。洗濯機の脱水と同様な低周波音による空気振動がおこりながら、「聞こえない音では健康被害は起こらない」「参照値以下であるから受忍限度内」だと、行政も事業者も主張しているのである。だが、この自治体はは参照値以下であっても、市が双方の話し合いの労をとり、エコウィルは撤去された。民業圧迫といって計測さえしない自治体が多い中、このような対応はき 
わめて稀である。
 
     
グラフ下
 折れ線(黒)は某喫茶店内(問題機器は無)で計測した低周波音のグラフである。折れ線(赤)は上記被害宅居室内(近隣エコウィル)である。
 可聴域50Hz-80Hz(点線部)に関して、ざわざわした喫茶店内は、居室よりも高い数値になっているが、聞こえない領域には音圧の突出する卓越周波数はない。ゆえに、この喫茶店内のような空間では、被害宅で生じる被害症状はまったくなく、被害者にとってはかえって喧騒の中の方がくつろげるのである。すなわち、被害者を苦しめるのは騒音ではなく、長時間途切れることなく持続する低周波音である。