石鹸「茶のしずく」とエコキュート・エネファーム 20120831(20121105改稿)


低周波音被害は、個人差が大きく、同一環境にいるすべての人に生じる訳ではない。しかし、茶のしずく石鹸を長期に使用して、徐々に体内に抗体が蓄積され、アレルギーが発症したように、低周波音被害も、潜伏期間に長短はあるが、低周波音に暴露され続けることにより、低周波音過敏症の発症の危険が高くなっていく。
 

 食物アレルギーや花粉症と異なり、低周波音被害は物理現象によるものであり、体内に抗体という明確な痕跡を残すことはなく、低周波音の生じる場面で症状が発現し、低周波音の消失とともに症状は消える。
また、茶のしずくによる小麦アレルギーは視覚的にはっきりとした症状をおこし、アナフィラキシーともなると救急搬送が必要な激しい症状となるが、低周波音被害は、不定愁訴という、“他人には判りにくい”症状(不眠や頭痛、悪心、胸の圧迫感等)で、周囲の理解が得られず家庭不和や家庭崩壊に至り、あるいは仕事の継続が困難となって、生活が破壊される深刻な事態を現実には引き起こしている。また不眠によって鬱状態にも陥り、自ら命を絶つ危険性もある。
 茶のしずくは被害者自身が事態を認識すれば、その危険物を身から遠ざけ、身の安全を確保できるが、隣家の長時間継続する低周波音は、一旦過敏になれば、防ぎようもなく、休息、安穏の場である自宅から逃れるしかない。

 こうして、化学物質による被害と物理現象による被害とで明暗が分かれる。茶のしずく石鹸の場合、抗体検査等で石鹸との因果関係がはっきりとわかり、厚労省、消費者庁が注意喚起し、販売者は商品の自主回収をした。しかし、低周波音は臨床医の関心はなく、各地に点在する被害者は、業者に判で押したように「苦情はあなた一人」「あなたが神経質なのだ」と追いつめられている。そのうえ、裁判となれば、低周波音と健康被害の因果関係でさえ、被害者自身が立証しなければならない。「科学的因果関係」を被害者がどのようにして、立証できるのだろう。茶のしずく石鹸の被害者達が「科学的因果関係」を自身で立証したのか。理不尽にも低周波音被害者にはそれが求められている。

 茶のしずくは、体調不良が石鹸であったことに気付かない被害者も多く、厚労省が広く注意喚起し、相談センターを設け、マスコミで報道されたからこそ、1500人という被害者となった。一方、低周波音被害者は、救いを求めても行政には放置されており、被害に気づかないまま体調不良に苦しむ人々も多数いると思われる。

 また、自治体は民民問題不介入であるところが多く(松戸市など例外もある)、市に公害苦情として受け付けてほしいと願っても却下という状況である。ネット上の掲示板では、エコキュートやエネファームの被害を訴える多数の書き込みが見られるが、おそらく、消費者庁に集まる苦情者数は氷山の一角だろう。ある被害者がエコキュートの苦情を消費者生活センターに言ったところ、機器の所有者(消費者)ではないという理由で受理されなかったこともあり(追加 2012年くらいから、非所有者でも苦情は受理されるようになった。しかし、2015年現在でも非所有者からの苦情を受け付けない地域もある)、消費者庁は正確な被害実態を把握しているとは思えない。個々の被害者は、通常、製造販売者に苦情を言うが、販売者は「苦情はあなた一人」で、苦情を隠蔽してきた。

 20095月の建築ジャーナルで「エコと低周波音」が特集され、エコキュート被害により自殺に至った方の記事も掲載されているが、その同じ紙面に各製造販売者は苦情は確認していないと記されている。その後もエコキュートはトラブルを各地で起こし、NHKでも報道されている。また、2011年からは各地で裁判にもなっている製品であり、問題がないとは言えない状況であるのだから、厚労省・消費者庁は実態を把握し、速やかにその安全性について確認すべきだった。茶のしずく事件を前例として、同様な危険のあるコチニール色素は、消費生活センターにアレルギー症状の事例が1件もないにも関わらず注意喚起をしている。しかし、エコキュートによる低周波音被害は環境省主導で参照値以下で健康被害はないということで被害は放置され、厚労省・消費者庁は認識に至らず、エネファームは高額の補助金を受けて販売され、再び被害者を出すことになった。参照値以下で被害がないのなら、なぜ、被害に苦しむ人々が自宅を捨てることになるのだろう。

 国が補助金を出して、その普及に力を注いでいるエコキュート・エネファーム。そのような機器で、低周波音被害が起こっている事実を一刻も早く認め、実態を調査し、設置場所等、注意を喚起すべきである。

 2020年にエコキュートは1000万台、2030年にエネファームは250万台と業界はこれから、更なる普及を見込んでいるが、住環境に低周波音が蔓延する前に、何らかの手立てを講じるべきだと思う。早く、相談窓口を設置するよう求めたい。

 現代社会は多くの機器によって成り立ち、家庭環境にも人工的な低周波音が入り込み、低周波音地獄を目前にしていることを社会に周知させたい。社会人の生産性や子供たちの落ち着いた学習環境を奪う低周波音に関心を持ってほしい。低周波音は私たちから休息の場や静謐な思考空間を奪う。