解説   夕 顔


 源氏物語夕顔の上に由来した曲です。同様に夕顔を主人公にした半蔀がありますが、物語の展開が異なります。
 豊後の国より都に上った旅僧(ワキ)が今日も仏閣を訪ねて洛中を歩いていますと、 路傍の四阿(あずまや)から女性の和歌を詠ずる声が聞こえてきました。  程なく現れた女性(前シテ)に声を掛け、名所を尋ねました。女性は、此所は源氏物語夕顔の巻に何某の院と書かれているが、 その昔は融大臣の邸宅河原の院であり、夕顔の上が露と消えた跡だと語ります。 僧の求めに応じて女性は、夕顔の話を詳しく語り、姿を消します。
 僧は、夜もすがら読経をして弔いますと、夕顔の上の霊が現れて、現世の想い出の舞を舞って見せ、僧の読経の功力により、 迷いもなく仏果を得たと云って、明け方の空に消え失せました。
 三番目本蔓物に分類される曲ですが、前シテの現れ方や、曲の留めにそのまま中入りする構成、後場の組み立て方などに、 少し破格な形が見受けられます。


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