解説   遊行柳


 一遍上人の教えを受け、六十万人結成往生の御札を弘めるため、諸国を廻っている遊行上人は、奥州に向かって歩みを進め、白河の関を通り過ぎ、新しく拓かれた道へ行きかかりました。
 すると、一人の老人が声を掛けてきました。先代の遊行上人が通った道を、案内しようと云います。その案内に伴われて、川沿いの古道を進みますと、朽ち木の柳と名付けられた銘木がありました。老人は、この木の下で涼を取った西行上人の詠歌を紹介します。やがて、上人より十念を授かったことを喜びつつ、立ち去って行く老人の姿は、この柳の影に消えました。
 在所の者から、詳しく由来を聞いた上人は、柳の精が仮に現れたものと思い、読誦をしていると、老体の柳の精が現れました。柳の精は、法の功力に感謝し、内外に伝わる様々な柳の徳を語り、報謝の舞を舞って見せますが、やがて夜明けとともに姿は消えて、蹟には朽ち木の柳が、寂しく佇んで居ました。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新