解 説   烏 頭

喜多流以外は「善知鳥」と書きます。


 諸国廻国修行の僧が、越中立山の霊地にやってきました。
 地獄といわれる光景を眼前に見て、慚愧の心を抱きつつ下山の途につきますと、一人の老人が現れ、陸奥へ下るならば、卒都の浜へ行き、昨春死んだ猟師の家を尋ね、蓑と笠を手向けてくれるように、と伝言を頼みます。僧が「何か証拠の品を」と言いますと、老人は着ている着物の片袖を引きちぎって渡します。僧は、その片袖を預かり、老人と別れました。
 陸奥卒都の浜では、猟師の妻と子が寂しく暮らしています。
 僧はその家を訪ね、立山での出来事を詳しく話し、持ってきた片袖を妻に渡し、亡者の乞うままに、蓑と笠とを手向けて回向します。
 その回向の声のうちより、猟師の亡霊が現れて、地獄の苦しみ、特に「うとう」の小鳥を捕る有様、その殺生の罪の責め苦の有様を、詳しく語って、僧に罪の苦しみの助けを請い、姿は消え失せました。


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