解説   歌占


 伊勢の国の渡会の何某と言う神職の者が、廻国の旅に出かけましたが、神様にお暇乞いをしなかったので、神の怒りにより俄に死に、三日目に蘇生しましたが、その間の地獄の苦しみのために、頭髪が悉く白くなりましたが、そのまま諸国を彷徨い、和歌による占いを、道行く人に引かせて、世を渡っていました。
 その子の幸菊丸は、父の行方を尋ねて諸国を巡り、加賀の国白山の麓に来て、その歌占師と行き合い、父とは知らずに歌占を引きましたが、父子は既に逢った占いだと言われ、その歌占の奇特によって、互いに名乗り逢い、親子の再会が出来ました。
 土地の人たちとの別れに、父は地獄の苦しみと有様を物語って聞かせましたが、その内に、神様の呵責によって、五体を苦しめますが、天に叫び地に伏して、神に謝りますと、また正気に戻ることが出来て、父子は伴って、再び伊勢の国へと帰りました。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新