解説   経 政


 平の経政は、敦盛の兄です。幼少の時より、京都の仁和寺、御室の御所に入り、その時の御門跡の守覚法親王に仕えていました。
 和歌をよくし、又、琵琶も上手でした。仁和寺の宝物の琵琶の名器「青山」を、法親王に許されて、常に弾じていましたが、平家都落ちの時、その琵琶を返上して、落ち行きました。そして、一ノ谷にて戦死しました。
 法親王は、僧都の行慶に、経政の追善の法要を執り行わせました。
夜も更けた頃、経政の霊は、その法要の場に現れて、弔いに感謝を述べ、「青山」を弾じて、共に夜遊を楽しみますが、修羅道の姿を、人々に見られるのを恥じて、灯火を吹き消して、その暗闇のうちに、姿を消しました。
 弔いの有り難さと、管弦の音楽に惹かれて、現れ出てきても、修羅道の苦しみの姿を、人に見られるのを恥じるという、経政の優雅な人柄が、美しく表現されています。
 流儀によっては「経正」と書きます。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新