解 説 東 北(とうぼく)
東国に住む僧が、京都へ上ってきました。東北院にある色香美しい梅の木を、付近の人が和泉式部と云う名だと教えてくれました。
人の名が梅の名になっているのを不思議に思いながら休んでいますと、一人の女性が現れ、その梅の由来を語って聞かせてくれました。この寺は上東門院邸跡で、そこに住んでいた和泉式部が植えた軒端の梅であること、その後にそのまま寺になった事などを教えてくれましたが、女性は花の主であると言って消え失せました。
夜になって、軒端の梅の近くで、御経を読誦していますと、和泉式部の霊が現れ、上東門院邸に住んでいた頃を思い出し、梅を愛でながら舞を舞い、方丈に入ると見えて、夢のように消えました。