解説   竹 生 島(ちくぶしま)


 時の天皇の臣下(ワキ)が竹生島に参詣しようと琵琶湖の畔まで来ました。通り掛かった漁船に竹生島までの便船を頼みますと、漁翁(前シテ)は快く乗せてくれました。風も凪いで春の麗らかな湖上を、四方の景色を眺めながら、竹生島に着きました。船から上がりますと、漁船に乗っていた女性(前ツレ)も一緒に付いてきました。この島は女人禁制ではないかと訝ると、漁翁は弁財天は広大無辺だから、また女性は弁財天は女神だから構わないと、それぞれが説明した後に、女性は「我は人間に非ず」と云って社壇の中に、また漁翁は「この湖の主」と云って水中に、姿は消え失せました。
 社人(アイ)は都より参詣の臣下を摂待します。臣下は猶も奇特を見ようと待っていると、神殿が鳴動して光輝き、弁財天(後ツレ)が姿を現し、舞楽を舞って見せます。舞楽が終わると、湖水が波立ち騒ぎ、波間より龍神(後シテ)が宝珠を捧げて現れ、臣下に与えます。弁財天も龍神も、衆生済度・所願成就の誓いを具現して、社殿と湖中の竜宮へそれぞれ帰って行きました。


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