解説   龍  田(たつた)


     全国六十余州に納経を志す修行僧(ワキ)が大和から河内へ通る途上で龍田の明神へ参詣しようとしました。社前の龍田川は既に冬の気配となり川面は薄氷が張っていました。
 その川を渡ろうとすると対岸から女性(前シテ)が渡ってはいけないと声を掛けてきました。よくよく聞くと龍田川は古歌に数々詠まれているのでその心を汲み取って渡るように諭しているのでした。紅葉の頃は錦に譬えまた冬になれば薄氷をむやみに踏み破らないようにその心を知って徒渉するように戒めているのでした。  その女性は巫女でしたので僧を誘い社内の宮巡りに案内しますがそのうちに自分はこの龍田明神の化身であると名乗って社殿の中へ入って行きました。(中入)
 僧は奇特の続きを得ようと神前に通夜をして読経に励みました。やがて龍田明神(後シテ)は姿を現して奇瑞を表し神慮を知らしめて神楽をを奏して舞い遊び謹上再拝と山河草木国土穏やかに治めて神は上がらせ給いました。


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