解説   谷 行


 京都今熊野に住む、帥の阿闍利と云う山伏は、葛城大峰へ修行に出発するため、幼少の弟子の松若の家へ、暇乞いの挨拶に来ました。
 松若は、病気の母の現世安穏の祈願のため、無理を云って参加しました。しかし、幼少の身にとって、峰入リは大変な荒行です。たちまち疲労から、命も危なくなってしまいました。
 山伏修験道では、行の途中で、病気になった者は、谷行と云って、深い谷に捨 てる規則があります。帥の阿闍利は、大法により仕方なく松若を、谷行に行な います。
 しかし、その不欄さの余りに一同は、力を合わせ日頃の法力を用いて、再び蘇生させようと祈祷をします。
 その真心が通じて、役の行者が現われ、願いを叶えようと、伎楽鬼神を呼び出し、松若の死骸を谷よリ拾わせて蘇らぜ、その孝心を褒め、帥の阿闍利の手に返し与えました。


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