解説   舎 利


 出雲の国美保の関の僧(ワキ)が、京都へ上ってきて、東山の泉涌寺へ着きました。この寺には釈迦の牙舎利が祀られています。寺男(アイ)に案内して貰って舎利殿の戸を開けて貰い、経文を唱え感慨に耽っていますと、寺の近くに住む者と云う男(前シテ)が一人入って来ました。
志を共にする者と思い、一緒になって牙舎利を拝んでいますと、その男の様子が変わり、牙舎利を取り上げ、天井を蹴破ってどこかへ行ってしまいました。
 寺男は異変に気付き、昔の出来事を僧に話します。足疾鬼と言う者が舎利を盗んで逃げた時、韋駄天が追っ掛けて取り戻したというのです。その故事に倣い、寺男は韋駄天を呼び出します。
 足疾鬼(後シテ)は舎利を奪い取って逃げ去りますが、呼び出されて昔と同じように現れた韋駄天(シテツレ)に、天上界まで追い掛けられます。
仏法守護の諸天より追い出されて、逃げ場を失い下界へ戻った所を、韋駄天に追い詰められ、牙舎利を取り戻されます。足疾鬼は力なく茫々と立ち上がり、消え失せます。
 後場は尾能らしく、壮大な規模を想像させる場面が、展開されます。


解説目次へ    展示室TOPへ    演能案内    舞台写真へ