解  説   石  橋


 大江定基は出家して寂照と名乗っていました。佛法伝来の遺跡を訪ねるため中国へ渡りました。
 あちらこちらの佛跡を訪ね歩き、青龍山(しょうりゅうぜん)に辿り着きました。谷を隔てた向かいの山は清涼山(しょうりょうぜん)と云って、文殊の浄土と言われているところです。しかし、その間を隔てる谷は大変深くて、そこに架かっている橋は、石橋(しゃっきょう)と言われている自然に出来た橋です。その橋を渡って対岸へ進もうとすると、通り掛かった山人が、危ないからと云って引き留めます。山人は、この石橋の由来を語り、相当な貴僧や高僧と言えども、ここで何日も修行を積み、それから渡った物だと諭します。寂照も教えられたことに従いうことにしました。
 日が傾き影向の時節となりました。橋の向こうから文殊に仕える獅子が(今回は連獅子ですので親子二頭の獅子になります)現れ、橋の上で戯れ、また牡丹の花に戯れて、やがて獅子の座に戻って行きました。


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