解 説   卒都婆小町そとわごまち


 高野山の僧が、京都に上る途中の出来事です。
 倒れて朽ちかけた卒塔婆に、みすぼらしい老女が、腰を掛けて休んでいました。その心なさを教化して、立ち退かせようとしましたが、問答を進めるうちに、順縁も逆縁もうかむ事が出来るなど、僧は次第に言い伏せられてしまい、かえって逆に、老女の信念に感じ入って、頭を地につけて礼をしました。
 真実を知るこの老女に、名を尋ねますと、百歳近くなった小野小町と名乗りました。
 僧は驚き、互いに栄枯盛衰の理を語り合いますが、やがて老女は物に憑かれたように立ち上がり、若かった頃、多くの男達を悩ませたこと、その中でも、深草の少将が、小町の許へ、百代通った有様を見せましたが、やがて覚め、後世を願って、悟りの道へと入っていきました。
 この曲は、いわゆる老女物の中でも、狂女物的な曲です。独立した舞(序の舞など)もなく、地謡の中にも、比較的激しく、狂いのような部分もあったり、変化の多い曲です。


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