解説   実  盛(さねもり)


     一遍上人の流れを汲む遊行上人(十四代目といわれている)(ワキ)が、加賀の国の篠原にて布教をしている場に、毎日現れる老人(前シテ)がいました。上人は、その熱心な老人に話し掛けるのですが、上人以外の者に、老人の姿は見えていなかったのです。不思議に思い上人が名を尋ねますと、二百年前に源平合戦で討死にした、齊藤別当実盛と名乗り、近くの池に畔に姿を消しました。  上人は、篠原の合戦で討たれた実盛の霊であると思い、仏事を執り行いますと、老武者(後シテ)の姿にて再び現れましたが、やはりその姿は上人以外の者には見えませんでした。  実盛の霊は、首を刎ねた手塚光盛が、主君の義仲と首実検した状況、錦の直垂を宗盛から下賜された事、最期に義仲と討ち死にすべき所を、手塚に打たれた無念さなどを語り聞かせ、南無阿弥陀仏と唱えて、亡き跡の弔いを願い、消え失せました。


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