解説   翁


 翁は能楽の根元と言うべき、神事式楽です。二百余番の他の曲とは違って、演劇的要素は皆無です。天下の泰平を、人類を代表して祈る原始宗教的儀式です。
 楽屋鏡の間には、翁の能に使われる白式黒式の能面を、神体として祭壇に祭り、御神酒や饌米を供えます。能の始まる時に行われるお調べに先立って、この祭壇の前にて、太夫が祭司となって拝礼し、直会のお盃が廻されます。
 それにより一同整列し、太夫・三番三・囃子方・後見・地謡の順に、全員橋掛を通って舞台に登場します。正面先にて太夫の、天地に対する拝礼の後、一同着座し、始まります。
 このように、始めから終わりまで、秘事尽くしの御神事です。皆様方も、この御神事に参列すると云う心積もりをお持ち下さい。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新