解説   鵺  


 諸国一見の旅僧(ワキ)が、三熊野から西国への途中で芦屋の里まで来ました。夜になったので宿を借ろうとしますが、里人(アイ)はご法度だと言って貸してくれません。仕方なく浜辺の蜑小屋に泊まることにしました。この小屋には、得体の知れない者が現れると云われました。
 夜半になって不思議な蜑人(前シテ)が、船に乗って現れました。不思議に思って、声をかけて身の上を尋ねますと、源の頼政に退治された鵺の亡魂と名乗り、退治された謂われを語って聴かせました。
 近衛天皇は夜になると、何者かに苦しめられました。公家達が詮議をして化生の者の仕業と判じ、頼政に退治を命じました。頼政は化生の者が御殿の屋根上に現れるのを待って、矢を放ち射止めます。射止められた化生の者は、顔は猿、手足は虎、尾は蛇、叫び声は鵺の啼き声と云う恐ろしい形相した化生の者でした。遺骸は船に詰められて流され、芦屋の里の浜辺に流れ着いたのでした。
 過去の話を聞いた旅僧は、里人(アイ)からの話と聴き合わせて、鵺の亡魂を弔いました。鵺(後シテ)は読経の声に惹かれて正体を現し、再び退治された当時の有様を再現して見せ、山の端に沈む月と共に消え失せます。


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