解  説   清  経


粟津三郎は、九州柳が浦の沖で入水自殺した、主君清経の遺品を、清経の妻の許へ屈けるため、京都に戻ってきました。
子細を知らされた妻は、清経が京都を発つ時、この世で必ず再会しょうと約束したのに、その約束を破った清経を恨みに思い、形見の品々を手に、「みるたびにこころづくしのかみなればうさにぞかえすもとのやしろへ」と和歌に我が心を託し、再び逢いたい恩いを抱きながら仮寝をしますと、その夢枕に清経が現れます。
清経が、せっかく送った形見をなぜ返すかと、恨みをいいますと、妻は、夢にでも逢えたことを喜びながらも、約束を違えて自殺をしたことの恨みをいい、互いに恨みを言い合います。
清経は、妻を慰めようと自殺に至った有様を語って聞かせますが、妻はなお恨み言を言います。さらに清経は、修羅道の苦しみも見せて、最後に十念の功力により仏果を得たと言って、消え失せます。
「音取」の小書の時、シテは特別な笛に合わせて、出てきます。笛方にとって非常な大役です。シテもその笛の音を聞きながら、笛に合わせて出ますので、笛とシテとの呼吸の一致が、重要になります。


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