解  説   鬼 界 島


 平清盛は、中宮徳子の出産を前に、諸国の罪人に大赦令を下しました。
 薩摩鬼界島にも、赦免の使者が、やって来ました。狂喜して迎えた赦免状には、成経・康頼の名はありましたが、俊寛の名はありません。俊寛は、これは誤りだろうと、使者に詰問しましたが、使者は、二人のみの赦免だと云います。
 俊寛は、同じ罪にて同じ配所に滅されながら、一人残される処分を恨み、赦免状を読み返しますが、俊寛の名はどこにも書かれていません。使者は成経と康頼の二人を促して、船に乗せます。俊寛は、せめて向いの岸までなりともと、取りすがりますが、使者は振り捨てて船を出しました。
 一人取り残されて嘆く俊寛の姿を見て、船上の一行は、都に帰ったら、俊寛も間もなく帰洛出来るように、必ずとりなすからと言って慰めました。その言葉に一縷の望みを託して、俊寛は遠く消え去る船影を、渚に泣き伏しながら見送りました。


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