解説   邯鄲


 中国の青年廬生は、楚国の高僧に、人生の教えを乞いに行く途中、邯鄲の宿に泊まりました。
 この宿の亭主は、不思議な枕を持っていました。この枕をして眠ると、瞬時に悟りが開けるというのです。亭主の薦めで、廬生も、その枕で、一眠りすることになりました。
 枕に頭をつけると、たちまち勅使が現れ、楚国の帝が、廬生に位を譲ると云います。廬生は戸惑いながら、輿に乗って宮殿に行き、王位に就きました。そして、五十年が経ち、廬生は、一千年の寿命を保つという仙家の酒を飲み、長寿を祝う酒宴を開いて舞を舞い、限りない栄耀栄華を尽くした日々を送っていますが、宿の亭主に、食事が出来たと起こされ、一瞬のうちに宮殿は、旅宿に戻りました。
 廬生は、王位に就いての五十年の栄華も、人生そのものも、夢だとの悟りを得て、枕に感謝し、故郷へと帰っていきました。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新