解  説   鉄   輪


 京都の下京辺に住んでいた男は、永年連れ添った妻を離別して、別の女と契りを結びました。捨てられた妻は、恨みに堪え兼ねて、貰船の宮に丑の刻詣でをして、恨みを晴らそうとしました。或夜、社人から、顔に丹を塗り、鉄輪の三つ足に火を灯して頭に頂くと、其のまま鬼となって、恨みを晴らせると言う神託を告げられました。妻は神託の如くしようと、急いで我家に帰りました。
 先の男は、続いて悪夢を見るので、安倍晴明の許に行き、夢を占ってもらいますと、女の恨みで命も今夜限りだと言われます。男は驚いて、祈祷を乞いました。
晴明は壇を築き、茅で等身大の男女の人形を作り、一心に祈リますと、風雨暴れ狂い、忽ち鬼女の姿が現れ来て、男女の人形を引き立て行こうと、枕辺に立ち寄りましたが、三千番神が怒をなして、追い払いました。鬼女は忽ち通力も失せて、本意を達せずに、逃げ去りました。


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