解説   杜若


 東下りの旅僧が、三河の国八橋の杜若の美しさに、眺め入って休んでいますと、一人の女が声をかけてきて、この八橋の杜若と、在原業平との関係を、伊勢物語の和歌を引用して、話して聞かせ、一夜の宿を提供します。
 宿に着くとその女は、業平の形見の冠と衣を着して、旅僧に見せます。僧は不思議に思い、問い尋ねますと、この冠と衣は、伊勢物語に詠まれた物であって、自分はこの杜若の精であると名乗ります。そして、業平は歌舞の菩薩の化現であるから、その詠まれた和歌は説法の妙文となって、草木も仏果を得ることが出来るなどと語り、伊勢物語の東下りを舞にして語りますが、、夜明けと共に、草木国土悉皆成仏の御法を得た喜びを述べて、消えて行きました。
 「袖神楽」の小書は、金春流にだけある、特殊演出です。曲から後に、色々の常と異なったところがあります。
 「素囃子」の小書は、序の舞が変化し、イロエになります。物着の装束も曲舞の型も、変化があります。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新