解  説   葛  城


 出羽の国羽黒山の山伏は、大和の国葛城の明神に参詣を、思立ちました。葛城山の山中で、俄雪に降りこめられ、岩陰で晴れるのを待っていますと、女性が一人通りかかり、谷陰の庵へ案内してくれました。庵に着くと、雪の中で拾い集めた柴を焚いて、暖を取ってくれました。夜になったので山伏が、勤行を始めますと、自分の悩みを、祈り加持して下さいと頼みます。山伏が不審に思い、尋ねますと、自分は葛城の明神で、醜い顔のために明王との約東を果たせず、咎めを受けているといって、神隠れに消え失せました。
 山伏が、夜の勤行を続けていますと、葛城の神が、蔦葛をまとって現われ、神楽歌を謡い、大和舞を奏して、山伏をねぎらいますが、容貌が恥ずかしいからと、夜が明ける前に、葛城の岩戸の中に入って行きました。


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