解説   羽 衣


 今更皆様に、解説をするまでもない程、よく知られた曲です。
 富士山の麓、三保の松原にすむ漁師、白龍(はくりょう)は、今日も釣りに出ようと、浜まで来ますと、松の木に、この世のものと思えない衣が、かかっていました。
 あまりの美しさに、持ち帰って家の宝物にしようと、手に取りますと、一人の天女が現れ、それは自分の羽衣であり、人間に与えることが出来ないものだから、返してくれと言います。白龍はそのような珍しいものなら、尚更返すことは出来ないと、答えます。天女は、羽を失った鳥のごとく、天上に帰れなくなったと、嘆きます。
 あまりにも悲しそうなので、白龍は哀れになり、衣を返してやりました。天女はそのお礼に、その羽衣を着て、天上の舞いを舞って見せ、舞うにつれてその舞う姿は、次第に高くなり、春の霞に紛れるように、遂に天空に消えて、見えなくなりました。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新