解説   敦盛


 熊谷直実は、一の谷の合戦に平家の公達の敦盛を手に掛けてから、世の中がいやになって出家し、蓮生法師となりました。
 敦盛の菩提を弔うために、一の谷にやって来ました。敦盛を弔っていますと、遠くから草刈り達の吹く、笛の音が聞こえてきます。やがて、笛を吹きながら近づいてきた草刈り達に声をかけますと、その中の一人が敦盛のゆかりの者と言います。懐かしく思いながら念仏を唱えますと、毎日の弔いを感謝すると言いながら消え失せました。
 夜を徹して弔っていますと、敦盛の霊が現れて、弔いを感謝し、一の谷での最後の夜の有様、熊谷直実に討たれる場面を再現しますが、今は昨日の敵も今日は仏法の友であると言って、なおも弔いを依頼し、消え失せます。
 わずか十六歳の若年の敦盛を、戦争の中での出来事とはいえ、手にかけた蓮生法師の心の中と、敦盛の死後の気持ちを想像させます。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新