解説   海人


 房前の大臣は、忠臣達の言葉によって生母が、讃岐の志度の海人であることを悟り、その追善法要をしようと志度に参りました。
 通りかかった海人を呼び止め、その昔の話や、海人の旧跡などを尋ねますと、当時の出来事を、詳しく話しました。大臣は自分の出生の真相なので聞き入り、身分を明かしました。海人は、貴人の身の上話を、本人とは知らずに話したことに恥じ入りましたが、乞われるままに、海人が海中に入り珠を捜し出して引き上げた有様を再現して見せ、実は自分は、その海人すなわち母親の霊と名乗り、文を残して、海中に姿を没しました。
 その文には、十三年がたった今、大臣に孝心があるならば、弔ってくれるようにと書いてありました。大臣の弔う読経の声に誘われて、今は龍女となった海人の霊が現れ、龍女成仏の経文を大臣に与え、喜びの舞を舞いました。
 この時から、志度寺の八講の仏事が、毎年行われるようになりました。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新