京都地方自治ネットレポート20060324
「格差社会への挑戦」考A(労働組合組織)
このテーマで少しの意見発表の場をつくります。2004年5月1日の小論を掲載
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京都における公務労働組合組織の実態と公務・公共産別運動の展望

1.組織問題をめぐる京都での自治体・公共関係労組の実態と課題
(1)4月1日に京丹後市が発足するなかで、奥丹6町職は2月6日に市労連を結成し、できるだけ早く市職労に移行するという方針で、各町職とも臨時大会を開催し合流方針を決めました。同時に、合併に際して多くの組合員が賃金引き下げになると言う課題、当局が誠実な対応をしない問題に地労委闘争も含めて組合員の要求を実現するために、闘いをすすめてきました。一方で、合併により職場や仕事が流動化するという不安が広がり、当局の不誠実な態度とも相まって、少なくない組合員が脱落するという事態も起こりました。
 脱落の理由は大別すると3つあると思われます。
 一つは、これまでは一つの組合で親睦会的に運営してきたが、一緒になれば自治労も組合に入ってない人も同じ職場になり、選択肢が変わる。二つには、知らない間に組合に入っていて、入っていてもメリットがないが、やめたくてもやめられなかった。三つには、家や地域で自治労連はアカの組合と言われており、この際抜けたい。というものです。
 単組の基本的な組織活動の問題、役員の毎年交代制という状況が継続している、などの問題点を抱えていましたが、合併という自治体組織の流動化が一気にこうした気分を広げてしまう結果になったようで、自治労の存在で「選択肢」が増えるということも悪影響を与えています。
 野田川町の町職が、昨年自治労を脱退した理由は、「メリット」がない(当時の委員長・書記長談)でした。そして、自治労の組合費・自治労共済財政不正使用事件が引き金でした。これまで、京都自治労連などは「闘う組合・学ぶ組合・見える組合」をスローガンに奮闘してきましたが、こうした動きが表面化した今日時点で、組織活動の在り方、日常活動などを点検、検討する必要性があるのではないかと考えます。

(2)一方で瑞穂病院の嘱託職員、弥栄町立病院の看護助手(嘱託)、外郭団体嘱託職員からの労働相談等々が相次いでいます。京都市交通局の市バス嘱託運転手の組合が雇い止め反対で闘っています。昨年末に結成された宇治市公園公社労働組合は、組合結成時の要求であった休日出勤問題で、2年にわたり当局に精算させ、組合員も倍化しました。こうした動きは、公共的な仕事に関わる京都医労連、福保労京都なども同じ状況になっています。

(3)構造改革の矛盾は、このような形で労働組合組織にも直接的に出てきたわけで、「非常に困難であやうい状況」と「労働者の不安と怒りの高まりから、引き金さえあれば組織化と運動がすすむ」という、交錯する情勢と言えます。この動きをしっかり見て、いま組織の強化・拡大について「本格的に手を打つ」ことが緊急に求められている情勢だと言えます。

2.加速する労働力の流動化などの現状
(1)こうした労働者のおかれている状況の変化は、日本社会に広く広がっています。
 「2001年雇用動向調査結果」は、「雇用流動化」が雇用の現場で浸透していることを示しています。
 転職して新しい職場に入った労働者の就業形態を、前の職場と比較したところ、2001年で増加しているのは唯一、パートタイム労働者からパートタイム労働者への移動(前年比2.7ポイント増)です。パートという短時間で低賃金、諸権利も弱い労働形態だけが増加していのです。
 正規労働者を意味する一般労働者から一般労働者へは、移動労働者全体の60.9%で、まだ過半数を占めていますが、比率は年々減少。10年前の1991年と比較すると71.9%から11ポイントも低下しています。一方、パートタイム労働者は同期間に10.0%から19.2%へ9.2ポイント増とほぼ倍増です。また、一般からパートタイムに変更した労働者は、91年には6.3%だったのに、01年は8.9%に4割以上増加しています。

(2)また、離職理由を調べたところ、リストラ・人減らしや倒産など「経営上の理由」は、91年の4.5%から01年は12.0%と2.7倍に増加し、企業都合の離職といえる「契約期間の満了」や「定年」も加えれば、企業の都合による離職は、01年は27.6%と3割に近づく状況です。一方、「個人的理由」による離職は01年は66.3%でなお過半数を占めていますが、91年の78.8%からは12.5ポイントも減少しており、いやがらせによって退職に追い込まれる例もあり、すべてが「個人的理由」とはいえない面もあるのです。

(3)こうした、労働力の安売りを裏打ちするのが、失業率の高さです。3月の完全失業率を年毎に見ると、1960年完全失業率2.4%・完全失業者数107万人、1970年1.3%・67万人、1980年2.2%・124万人、1990年2.2%・141万人、1995年3.3%・219万人、1998年4.1%・277万人、1999年5.0%・339万人、2000年5.2%・349万人、2001年5.1%・343万人、2002年5.7%・379万人、2003年5.8%・384万人で、90年代に失業問題が大きく変化したことが分かります。
明らかに90年代の企業のグローバル展開のなかで、国内の失業がたかまり、同時に雇用の流動化が本格的に始まっている状況といえます。

(4)雇用の流動化は賃金低下にも結び付いています。
 「2001年雇用動向調査結果」によると、転職して新たな職場に入職した労働者の賃金を調べたところ、前の職場より「増加」した人は30.9%で、前年より2.3ポイント減少しました。一方、「減少」した人は31.3%で、前年より0.4ポイントの増加。転職して賃金が下がる方が、増加を上回っています。45歳以上の年齢になると、前職より賃金が「減少」した人は、「増加」した人を大きく上回り、60〜64歳層では「増加」はわずか6.9%、「減少」は64.8%で10倍近くにのぼります。44歳以下では、「増加」が「減少」を上回っています。
 1995年に発表された、「新時代の日本的経営」という財界の方針は、高賃金はコストであり、終身雇用の破壊で賃金水準も国際競争に対応できる水準に引き下げるという宣言でしたが、残念ながらこうした方向に合致した労働者の実態変化が進みつつあるといえます。

3.地方自治体が「住民のくらしの組織」から「住民の管理と監視の組織」に変質する危機が
(1)市町村合併や京都府の組織の大幅な統廃合が強行・強制されています。丹後の動きを見ても、到底住民自治を尊重すると言うことや、自律を促すなどということが重視されたなどとは言えないやり方でした。しかも、住民の意思を尊重する(せめて住民投票で決める)ことはなく、自治体の範囲は「くらしの範囲」としての議論はなく、「サービス提供の区切り」にすぎないような議論がまかり通っています。

(2)自治体リストラ・公務員制度改革を通じた地方自治体の公的責任放棄と自治体業務からの撤退は、「くらしの組織」としての自治体を変質させるものです。すでに、多くの職場では、臨時や嘱託などの非正規職員が激増しています。2002年12月12日総合規制改革会議の第2次答申は、「1 官民役割分担の再構築」として「民間でできるものは官は行わない」と端的に示しました。また、「2 消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大」として医療、福祉、教育、農業等の分野への株式会社の市場参入を主張しています。

(3)すでに、具体的なツールは一貫して準備されてきています。1997年「行政改革会議最終報告」は「実施部門のうち事務・事業の垂直的減量を推進」と主張し、その年、労働者派遣の原則自由化の法「改正」が成立しました。1998年中央省庁等改革基本法、労働法改悪(有期雇用拡大等)、1999年独立行政法人通則法、個別法、PFI法、2000年「行政改革大綱」、2002年構造改革特区法、2003年構造改革特区法改正、労働法改悪(有期雇用拡大等)、地方独立行政法人法、地方自治法改正(指定管理者制度)などの改悪が行われました。

(4)政府の「規制改革・民間開放推進会議」が4月12日発足しました。「総合規制改革会議」の機能を引き継ぐもので、小泉総理は「経済社会の構造改革を進める上で必要な国及び地方公共団体の事務及び事業を民間に開放することによる規制の在り方の改革に関する事項その他の規制の在り方の改革に関する基本的事項について、貴会議の総合的な調査審議を求める」と諮問、いっそうの自治体解体を進める諮問機関としての性格をあらわにしました。
 5月25日に開かれた第1回「規制改革・民間開放推進会議」は次のような決定を行っています。『今後、規制改革・民間開放を推進する上で、推進会議との密接な連携の下、「官製市場の民間開放」を今年度の主要検討課題とし、以下の課題について重点的な取組を進める。』『(1)行政サービス等の民間開放を推進するための「市場化テスト」や「民間開放に関する数値目標」等「横断的手法」導入に向けた制度設計、(2)国及び地方公共団体の事務及び事業の民間への移管(民営化・民間譲渡・民間委託)や公共施設の管理の在り方の見直し、(3)医療、福祉・保育、教育等の主要「官製市場」における国民生活に密着した関連制度の見直し』というものです。

(5)1999年に成立した住民基本台帳法の「改正」で、昨年8月から住民基本台帳全国ネットが本格稼働しています。凶悪事件、通り魔事件などの対策として、商店街等々に多数の監視カメラが設置されており、高速道路にはノンストップシステムのETCが導入され、免許・保険証などのカード化も進められています。個人情報保護法が2003年に成立。今国会には、国民保護法が上程されています。町内会での軍事・非難訓練も推進する国民保護法に対応する自治体業務についての検討が始まり、京都府には危機管理監という役職がつくられ、現役自衛官が配置されるまでになっています。
 こうしたことを促進する役割を持つとされる「安心・安全条例」も多くの自治体で制定されています。これらは一見なんの関連も無いように思われがちだが、住民の行動を迅速に掴み、管理することが技術的には可能になっているということを見逃すことはできません。

(6)自治体の変質は、当然として、そこに働く労働者の意識を変える作用として働きます。職場では、民主主義の手続きは形骸化され、トップダウンがまかり通るようになります。こうした動きに、意見を言うこと自体が自治体労働者としての資格がないような意見が職場で多数となってくことも考えられます。こうした思想攻撃に対抗する仕組みを職場につくっておかないと、民主的な自治体労働組合の存立基盤すら危ういことになるのです。

4.要求運動と労働組合の組織について
(1)日本の労働組合の推定組織率は、統計によると減少をたどっています。1970年の組合員数は11,481,206人、推定組織率35.0%で、2002年の組合員数は10,800,608人、推定組織率20.2%でした。そして、2003年にはついに20%を切りました。2003年の京都府内の労働組合組織は、総評・連合・中立を合わせて組合員数203,504人、推定組織率21.3です。
 労働組合は運動する団体ですから、相手(雇用者・企業・時の反労働者的な政府など)側からの攻撃(有形無形・思想攻撃も)によっても組織は変動します。しかし、労働組合の社会的な影響力や労働条件を支え規制する力も、諸外国に比べ組織率に比例して著しく小さくなっているのが特徴です。ここに興味深いレポートがあります。
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◆労組組織率と協約カバー率との差
 経済がグローバル化し、サービス経済化が進展する中で、パートや派遣労働者の増加など、雇用の柔軟化が日本でもヨーロッパでも進んでいる。先ごろ東京で開催された第10回日本・EUシンポジュウムは、そうした環境変化のなかで、労働組合の組織率の低下に日欧とも悩む状況が浮き彫りになったが、EU側から基調講演したパリ第7大学経済学部のアンリ・ナデル教授の一枚の資料が、日本の一般参加者から注目を浴びた。
 その資料は、労働組合組織率と団交による労働協約のカバー率(適用率)、それに賃金交渉が企業別、産業別、産業横断的のいずれが優越的かをまとめた各国比較表。それによると、日本の組織率は20.7%(2001年)に対して協約のカバー率は21%で、2つの数字にほとんど差がない。これに対しフランスの組織率は9.1%と低いが、カバー率のほうは90〜95%と、実質的に国全体に協約が適用されている状況を示す数字だった。日本もフランスも、賃金交渉は同じように企業レベルが優越的であるとされている。
 ほかの国についても、ヨーロッパでは概して、組織率は低くても団体交渉による協約のカバー率は、組織率をはるかに上回って高い。ドイツは組織率29.7%に対し67%、イタリアは35%に対し90%。デンマーク、フィンランド、スウェーデンなど北欧各国は、組織率もカバー率も80〜90%前後と高い。
 組織率の低下という状況は同じでも、労働組合の組織率低下が即、影響力低下に直結している日本と、影響力のほうはあまり打撃を受けていないヨーロッパの大部分の国とは、だいぶ様子が違う。日本のほうがずっと深刻だ。
 どうして協約の高いカバー率が保てるのか。会場からの質問に、ナデル教授は「組合に参加していない者が団体交渉の成果にあずかれるか否かについて、政府がアンパイヤーとして調停役をしている。政府が適用をギャランティーしている」と答え、法制による支えを指摘した。産業別交渉が完全定着しているドイツでは、団交の結果は産業内の労働者 すべてに及ぶし、北欧では社会保障制度の運用に労働組合が深く関わっている。法律や社会的慣行によって、労働組合の成果の社会的な拡張適用が担保されているという大きな違いがある。
 もっとも、日本の労働組合法18条には、労働協約の地域拡張がすでに規定されており、日本に制度がないわけではない。使い勝手が悪いという問題点はあるが、活用されていないだけである。その存在を知らない労組役員がいるほどだ。組織拡大の努力は当然のことだが、同時に、使い勝手が悪ければ改正を提起することも含め、労組自身が18条の活用にもっと目を向けていい。
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このレポートにあるように、日本では労働者の組織率に比例してしか、労働組合の交渉などの影響がないということです。もちろん、政府や自治体に対する法規制という影響を強める行動が重要なのですが、逆説的に言えば、現状では組織率を上げない限り、労働者の権利の擁護などがすすまないと言う実態も直視する必要があるのです。

(2)さて、そうした要求・権利などの問題を考えると、日本の労働組合の組織率を引き上げることが、いかに重要な課題であるのかが明らかだと感じます。そのために、組織化をすすめる上で、日本の企業内組合という形態を克服する課題が必要と言われています。
 いま必要な組織形態とは、どのようなものでしょうか。
 第一に今の形態は、労働者の流動化に応えうるかと言うことです。
 第二には、賃金などの最低規制は、少なくとも法令・条例など公権力に由来するものと、企業間協定・業種間協定など企業活動の公正競争の慣行に由来するものが必要と考えられます。いづれにしても、現在の企業毎に加入する労働組合形態が、地域の業者・企業集団への交渉力を持つか、自治体や政府に対する政治的な力を持ちうるかと言うことが課題となっているのです。(社会性を持つかという言い方もできるのでは)

5.日本の労働組合に未来をつくるためには
 労働組合の組織率の低下、すでに組織された組合内での「労組ばなれ」「青年ばなれ」という事態は、実感として現れています。
 なぜこのような事態が生まれているのかについて、次のようなことが考えられます。

○企業内組合は温存され、財界の言いなりの政策決定機構(審議委員など)に労働組合が組み込まれるが、グローバル化で労働条件は個別責任に矮小化され、要求実現するための労組結集を妨げている。
○雇用に対する企業責任が曖昧な短期雇用制度の拡大で、企業内組合の減少と組織されにくい(労働者の自覚とせっぱ詰まった要求がないと)不安定雇用労働者の激増。
○一定の経済的な安定を背景に、権利意識や階級意識が意識的に希薄化される思想攻撃が系統的につくられているもとで、財界と労働者の決定的な矛盾が覆い隠されてきた。

 それでは、今日のグローバル経済のもとで、労働組合の組織活動・組織拡大についてどのような考え方、体制をつくる必要があるのでしょうか。以下は、イギリスの労働組合がまとめたレポートです。
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◆イギリスTUCがまとめた組織拡大の基本原則(自治労連資料より)
 サッチャー政権下の労働組合に対する攻撃もとで、労働組合の組織率の減少が続きました。イギリスTUCは、減少に歯止めをかけ組織拡大を図るために、外国の経験を深く分析する中から、組織拡大の基本原則として次ぎの8項目として整理しました。
○組織化を第一義に考える。「組合員獲得と組織」(recruitment and organization)をすべての労働運動の最優先課題とする。
○実物資源を投入する。組織化は安上がりですむものではなく、唯一、有効な資源(資金と人)を「組合員獲得と組織」に投入してこそ、組合員数の減少を増勢に転じさせることができるのである。
○戦略的なアプローチを開発する。適切に工夫され、また資源を提供された組織化のとりくみで現実的な目標を設定したものは、さらに成果をうみ、士気を昂揚させるだろう。
○無駄な競争はやめよう。労働組合は、未組織の分野およびその恐れが増大していることに改めて問題の焦点をすえなければならず、労働運動全体の問題とすべきである。
○新しい仲間は仲間を集める。オルガナイザーは、組織化をめざそうとする労働者の多様性を配慮しなければならない。これらの集団は、昔から労働組合にじぶんたちの代表を送るという点で十分でない。
○専任のオルガナイサーをもっと活用しよう。そして訓練し、かれらの地位をたかめよう。the AFL−CIO(Amcrican Federation of Labor-Congress of lndustial Organizaition、米労働総同盟産業別組合会議)組織学校とACTU(Aus佃1ian Council ofTrade Unions,オーストラリア労働組合協議会)組織化研究プログラムは、運動に新たな血縁関係をもち、組織化のとりくみの能力を向上させた。そして組合員拡大が成功したことで、その成果を得たのである。
○代表者たちの自信と能力を確立しよう。代表者組織を確立することに努力をそそぐことは、既存の拠点組織を強化することに役立ち、また専従役員を新たな分野で組織するために、活動できるようにする。
○情報通信がカギ。労働組合のメッセージを労働者に伝えるためうえで、想像力を刺激するキャンペーンとマスコミの活用がカギである。
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6.現状での労働組合組織のあり方
(1)労戦問題以後、労働者の実態に合わせた組織の形態が充分検討されてきたでしょうか。労働組合は要求実現をめざす運動組織です。当然のこととしてその時代、その職種、その地域などとの階級力関係などによって変化するものです。どのような労働組合の形態かは、ある意味で、その時代と地域の労使の力関係や時の政権の労働政策の特徴も表すものであるのです。

(2)組織率の低下に対する日本の労働組合の組織化を成功させるプログラム(イギリスTUCの教訓)として、検討されるべき課題は次のようなものと考えられます。
 @流動化を加速する日本の労働者の実態と、自治体の再編やリストラの動きから、「公共」をキーワードにした、1人加盟の一般労働組合への組織と体制の確立が必要です。共済制度などもこうした実態に合わせた改革が必要かもしれません。
  注:京都自治労連などはすでに、こうむ公共一般労働組合、管理職ネット(これまで組合員の範囲でなかった部分)などの受け皿をつくりました。
 A一人でも加盟できる組合の組織の単位は、全体的な産別組織と、交渉権の獲得を含め、職場毎、地域(自治体)単位の組織が求められると考えられます。(産別支部結成など)
 B組織化には専任のオルグと体制が必要です。どれだけの規模のこうした機関を確立することができるのかが、拡大をすすめていく上でのカギとも言えます。
 C雇用形態を通じて、賃金引き下げを強行する資本の戦略などから、「賃金の最低規制」「賃金の底上げ」などが、要求政策の基本となっていきます。

(3)現状のなかで、雇用の流動化、自治体リストラ、市町村合併や再編などを念頭に置いた公共というキーワードで産別を考えると、少なくともナショナルセンターレベルでは、福祉保育労、医労連、自治労連三産別が、運動面でも組織面でもより協力しなくてはならないパートナーと考えられます。

(4)また、今日的な情勢の中で、三産別の協力を進める課題として、公共労働相談や専門の組織者グループの形成、情報センターなど情報収集・発信などの組織強化と拡大のための体制を整備と考えられ、学者や弁護士グループとの連携も欠かせないものです。

7.具体的に手をつける組織課題の方向
(1)組織拡大を本格的に
 @京都の亀岡以北は、今年度に市町村合併の帰趨が決まっていきます。また、市町村合併問題は、今後すべての自治体が何らかの動きがあると見る必要があります。その際、丹後での教訓を含めとりくみを進めることが重要です。職場には合併にともなう不安が広がりますが、これで労働組合運動にとって弱体化するのか、逆に労働組合に結集しようという流れを創れるのかが問われています。こうしたことは、自治体リストラについても同様です。
 A基本として、組織防衛とともに組織拡大について攻勢的に考え、とりくむことが必要です。合併にともなっては、未組織の人たちにも不安とリストラの危機があり、そうした職場と職員に、公共産別があり、相談や運動の基盤があることを知らせる活動を徹底し、激励し組織化につなげていく必要があります。
 B組織拡大には、専任のオルグと体制が欠かせないものです。公共部門に働く仲間とともに、「公共労働相談所・組織化センター」などを設置し、産別が攻勢的な組織拡大のとりくみを開始することは、単組・組合員や社会的にも激励を与えることになります。同時に、公共労働組合や役員個々人が連携をもつ「拡大ネットワーク」をつくることが求められています。
 Cこうした試みは全国規模で行うことが、大きな流れをつくることになり、中央レベルでの議論をもっと活性化する要請が必要です。

(2)当面の組織減少・財政規模の縮小方向のなかで、労働相談と組織拡大に専従的に活動する役職員をどう確保するかということが大きな課題です。こうしたとりくみのための人材確保も念頭に置いて、役職員の再任用(または再雇用)制度をつくるなどの措置が必要です。同時に、「長期的に見た組織拡大のための資金」をどうするかを早急に議論し、方針化する必要もあります。こうしたことを組織財政強化委員会で早急に検討する必要がです。

(3)組織運営の改善への検討課題
 @産別・単組役員体制問題、A産別の方針議論と日常運営の改善、B組合活動家の養成、C組合員の力を産別運動に生かす方法、などの課題の具体的な改革が必要に思われます。

(4)社会的な力を蓄えるために
 @賃金・労働条件問題について、地方財政の危機と連動した賃金改悪とリストラは必至の情勢です。これに対抗する運動の方向を明確にし、闘いが人勧→最賃→確定闘争のなかで職場と単組できっちとした交渉力をつけることが必要です。さらに、こうした要求課題を実現する基盤として、地方財政と住民の暮らしを守る運動を各単組が地域で行うことです。
  また、リストラ阻止・地域経済の活性化という運動で、低賃金層・不安定雇用層を中心に組織拡大が必要です。なぜなら、財界のねらう構造改革の中心は賃金破壊で貧困層の拡大です。そうした攻撃を受けている層が主体として立ち上がらなくては事態は変わりません。労働組合の組織化は闘う主体づくりでもあります。
 A地方自治の担い手づくり
  自治体問題研究活動の強化と自治研活動家の養成が必要です。地方自治の発展も又、その主体となる人が必要なのです。
 B退職者にも協力を
  経験ある人たちの力を吸収することの意義は大きいし、例えば退職者会などとしての運動も期待できます。

8.あらためて正面から公共労働者の組織化を
 財界の方針を見る限り、2005年を目標に着々と国民に対する、国の形を変える策動をしてきました。仕上げの目標は憲法改悪で、このままでは憲法改正投票すら予想され情勢です。
 しかし、矛盾もはっきり見えてきました。
 日本の労働組合の再生が、国民の未来に光をあたえることに確信をもち、とりくみをすすめことが、いま一番重要です。

小川進
おがわしん(労働問題アナリスト)

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