京都地方自治ネットレポート20060318
ポスト合併特例法 合併めぐる第二ラウンド(府南部を中心に)
06年3月1日、与謝野町が発足。合併特例法に基づく合併はこれで一段落し、府内の自治体数は44から28市町村になりました。京都市以北の自治体数は、京都市を含め6市21町(計27)が8市3町(計11)になり、合併しなかったのは伊根町・宮津市・舞鶴市・綾部市・亀岡市のみ、町は伊根・与謝野・京丹波の3町に激減。一方、乙訓・宇治市以南でも合併が推進されましたが、結果的に合併特例法による合併は一つも成立せず、7市9町1村が存続。なお、府内の人口1万人未満の自治体は6町村(伊根町(2718)、井手町(8951)、山城町(8913)、笠置町(1875)、和束町(4999)、南山城村(3466)になりました。
しかし今も、できるところから、できる方法で合併が推進されています。与えられた字数の関係で府南部の動きを紹介します。

【1】あわただしい動きの南部
(1)木津町・加茂町・山城町
 当初の相楽7町村合併構想は破綻。04年の木津町長選で3町合併を訴えた候補が当選したため、合併問題が始動。今年5月にも調印予定。
 ところで、合併特例法下では合併特例債の活用がメリットとして宣伝されましたが、合併新法には合併特例債がなく、住民に合併の幻想を抱かせる材料がありません。そこでスケールメリットが強調され、当地では「人件費は約4億8000万円、物件費は約4億9000万円それぞれ減少する」(新市建設計画素案)と宣伝されています(2月6日付け京都電子版)。また、自立のための行財政計画はつくらず、単独では財政破綻し、合併すればなんとかなると、合併やむなしの世論作りがされています。
 住民側からは、合併是非を問う住民投票条例制定を求め直接請求が展開され、法定必要数603筆を大きく上回る10,191筆(有権者数30,141人、確定数9,623筆)を収集。議会に付されます。
 また加茂町では町が合併の是非を問う住民アンケートを投票方式で行う予定。なお町長は投票率が50%を超えなければ開票しないと述べています。

(2)和束町・笠置町・南山城村
 3町村は、行政事務の連携による支出抑制を狙い、05年7月から府も入り協議。1月27日、協議会設置などを合意したと報道された。主な合意は、▽広域業務の調整等を担う協議会を06年4月1日付で発足▽共同化した広報誌を4月から毎月発行▽06年度中に町村教委を共同設置▽06年度から3年間は新職員の採用控え、この間に3町村の職員を計20人削減(1月27日付け京都電子版より)。

(4)向日市・長岡京市・大山崎町
 表立った合併の動きはなかった地域ですが、突如「乙訓2市1町の合併問題などを研究する京都南部地域行革推進会議乙訓地域分科会(会長・大山崎町長)は2006年度、各市町から職員を1人ずつ任命して合併問題専任の事務局を設置する。大山崎町役場の旧庁舎に事務所を構え、各市町の事務事業の違いなどを調査して、住民に情報提供する」(2月25日付け京都新聞電子版)と報道。

(5)宇治市・城陽市・井手町・宇治田原町
 八幡市・京田辺市・久御山町を含めた4市3町合併はこれまで、京田辺・久御山の住民アンケートで「自立」多数、城陽市長の慎重姿勢から2回頓挫。昨年の城陽市長選で自民・公明などが市長に合併推進を公約させ、2市2町合併の動きが始まりました。この4月に任意協、秋には法定協の設置が計画されています。
 中核市を目玉にしていますが、4市町の人口は計約29万人で中核市の要件を満たしません。土地利用見直し等で人口増を図ると、報道されています(1月28日つけ京都電子版)。しかし、@中核市だからといって住民の暮らしが良くなるわけではなく、A4市町の合計人口は、既に減少が始まっており、今後も人口要件をクリアーできるメドがありません。もし仮に1万人も人口が増えたならば小中学校など社会資本整備に多額のお金が必要になり、新市が財政危機に直面する恐れがあります。地に足が着かない話をせざるをえないところに、この合併に大義がないことを物語っています。

【2】京都府の動き
 合併新法で、知事の権限が強化されました(市町村長に合併協設置の勧告等)。多くの知事は「合併は地域住民が自主的、主体的に判断すべき」(岐阜県知事)と、この権限行使に消極的見解を述べていましたが、府知事は「場合によっては行使する」(04年4月25日付け京都)と回答しています。
 今年2月府議会で「市町村の合併を含めた地域のあり方に関する事項」を調査審議する審議会設置条例が可決。知事が勧告する場合の露払いをになう組織であることは明白。
 この間の動きをみると、水面下で合併を画策し自主的合併を演出し、一方で表から押し付ける審議会も用意するという両面から合併を進めているのが、府の姿でしょう。

谷上晴彦
たにがみはるひこ(宇治市職労福委員長)


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