丸岡城
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天守閣(71年6月)

小高い丘の上に、ぽっかりと小さな天守閣が、顔を覗かせていた。遠くからでも、向こうの山の上に、見つける事が出来た。犬山城の天守とならんで、古いこの丸岡の天守、当然、戦国の世のものであろうし、実戦にもなったのかも知れず、町の中の山城となっている。信長が一向一揆を平定し、柴田勝家がその守護となった時、甥の勝豊が天正4年に、この丸岡に築城したのが始まり。町に入り、中心街らしい通りを行くと、その城の麓に出る。狭い道を、その山裾沿いに回ると、裏手の方に駐車場がある。2、3台の車があった。そこから天守閣のある丘の方へ、階段を上がって行く。少し行くと、その右手に遊園地があり、そこから左手に、天守閣が木々の上に頭を出している。総ての屋根瓦が、石で出来ているせいか、全体にしっとりとした灰色で、いかにも北陸の、雪の中で経てきた年月を感じさせるようである。入り口の長い石段を上り、内部へ。大きくない一階、二階、三階で、急な階段がついている。外観二層のせいで、二階は狭い中二階だろうと思っていたが、案外に一階から三階までの部屋の高さは、同じぐらいである。石落としや狭間があるところからみて、最終的には戦うつもりなのだろうが、実際はだめだろう。狭すぎる室内には、何日もいる事が出来ない。それよりもむしろ望楼、倉庫として、その建物の偉容さを誇っただけの、非戦闘的な天守閣に見える。最上段には欄干がまわっているが、とてもそこを回るだけの勇気が無い。腐りかけている木々が、足を危なくし、その上、雨に濡れていたのと、何となく小さくて、かわいそうなのである。このあたりは犬山城の、あの天守閣の欄干とは違うし、何となく天守閣自体も、スケールが一回り小さい。だが、その上からの眺めは、格別である。晴れた日ならば、日本海も見渡す事が出来るのではないだろうか。(71年6月)