甍屋根


めっきり少なくなったとはいえ、甍屋根の風景が古都・京都のイメージだといわれる
甍の風景が京都らしいといわれる所以は、瓦のデザインと
「ムクリ」と呼ばれる丸みを帯びた独特の屋根の勾配によるものではないだろうか
表の軒に家紋などを彫り込んだ丸瓦を葺くのではなく、
シンプルな一文字瓦を葺いた町家が多いが、
これは「分相応」を旨とする慎ましさの表れ



また、古い様式の町家の多くは表の道に面した部屋の屋根が
ぐっと低くなっている虫籠(むしこ)スタイルで、
道から見る屋根は緩い弧を描いてふっくらと見える
虫籠とは言い得て妙で、まさしく虫籠(むしかご)。

二階の表に面した部屋は大人なら直立もできず、住みにくいことこの上ないが、
「私」よりも「公」を重んじる京都では、己の便利さや暮らしやすさよりも
町並みをこそ重視するのか、
低い甍屋根が水平に延びて続く町並みの景観は見事に美しい

また、甍屋根の風景を俯瞰で見れば、塀があるとはいえ、
裏同士でつながった各家々の庭の木々が町中にグリーンベルトを形成している
碁盤の目のように町が造られた京都ならではの光景で、
この甍と緑の整然とした景色が
「京都」らしいのである


つづく・・・