擬宝珠


橋はどこにでもある
勾欄(こうらん)の柱に玉葱のような擬宝珠(ぎぼし)の装飾があるのも、
別に京都だけのものではないが、三条、四条、五条と鴨川に架かる大橋は、
いかにも京都といった印象



三条大橋は東海道の西の起点で、江戸から来た旅人には終着点
長い旅を終えて、都に辿り着いた人々には、この橋こそが「京」であったに違いない
四条大橋は八坂神社の参道の橋で「祇園橋」の異名もある京都きっての晴れやかな橋
東畔に停む南座の晴れ晴れしさや鴨川の西に居並ぶ料亭などの
情緒溢れる停まいとも相まって、
京の花街の香りを漂わせる橋である



その南の五条大橋は、牛若丸と弁慶の出会いの場として京都で最も有名な橋
いずれの橋も旧態を残してはいるが、ただそれだけで
京都のイメージを形成している訳ではない
何といってもこれらの橋が、鴨川に架かっていること、擬宝珠の向こう、
東に緩やかな稜線の東山を望み、北には幾重にも織りなす北山が
霞んで見えるところが京都らしいのである



まして橋の上で、托鉢僧などがお経を唱えていたり、その前を素顔のままの舞妓が
せわしなく通り過ぎるなどすれば、これはもう、京の橋でしか見られない景色である


つづく・・・