修行僧


古都京都にはやはり僧侶の姿がよく似合う

バイクや自家用車で疾走する「ボンサン」の姿ではなく、裸足に草鞋(わらじ)掃き、
藍か墨染の法衣に深網代笠を被って、托鉢修行する若い修行僧がよい
「雲水」と呼ばれるこの修行僧は、声明の鍛錬も兼ねて
「ほー、ほー」と大声を張り上げて町内を歩くことから、
京都人は「ほーさん」などと色っぽい呼び方をする



「ほー」とは仏法の「法」である
定期的に現れるこの雲水と町の人々はかなり仲良しで、家人はほーさんの声を聞きつけると
小銭を握って表に出、「合掌」でほーさんにサインを出す
駆け寄って来たほーさんもまずは合掌

次に体をニツ折れに曲げて心からの感謝を表明
家人も再び合掌して崇敬のお辞儀をすると、
ほーさんは藍木綿(あいもめん)の前垂れを差し出す
その上に小銭を置くと、ほーさんは前垂れを両手で持ち上げ、
カンガルーの袋のようになっているポケットに小銭を滑り込ませ、合掌して行ってしまう
この間、ほーさんも家人も無言

修行の邪魔にならぬよう、言葉を掛けることはしないが、
家の宗派に関わりなく町の人々はほーさんのファン

人と人の心の交流が無言のうちに展開されるところがいかにも京都的なのである

つづく・・・