犬矢来

(たま〜に連れて行って貰う「てんぷらの吉川」さんです)


有名な祇園のお茶屋や西陣あたりの大店の表に巡らされた端正な竹の犬矢来
その字が語るように、犬のマーキング(小便)を防ぐための囲いで、
傷めば取り替えることを前提とした華奢な装置である

(平野神社近くの御宅)

(上七軒)

同じ目的のものに木や鉄製の柵「駒寄」(こまよせ)や
丸太に竹棒を二本か三本ざっくりと縄で結んだだけの「つばどめ」などもある
ちなみに、京の名旅館として知られる「柊家」と「俵屋」は向かい合っているが、
柊家は「駒寄」。俵屋の方は「つばどめ」で、互いにさりげなく宿の個性を表して妙である

(俵屋)

(柊家)

町中で最も多いのは何といっても竹の犬矢来で、
竹のほか鉄やステンレスも見かけるようになったが、
やはりこの町には、柔らかな表情を醸し出す竹の犬矢来こそふさわしい
ほとんどが竹のしなりが作る曲線のデザインだが、
そのしなり方や大きさの微妙な違いや不規則に並ぶ節の作る文様が、
格子や一文字瓦といった直線的な町家の雰囲気を和らげ、町並みに柔らかな景色を作る

青竹も清新だが、毎朝丁寧に雑巾で清めて飴色に光らせた矢来に、
京都の人々の営みの美しさを感じる
この営みの美こそが、京都なのである