時間がかかるお客との信頼構築

コデマリの荒療治(荒療治にはそれなりの理由が・・・)

付き合って一年未満のお客さんは、わたしたち庭師をなかなか信頼してくれません
手入れにお邪魔すると、時々縁側で奥さんが心配そうな顔で様子を見ていらっしゃる
木ばさみで枝先を挟んで(切って)いるうちは、チョキチョキという軽やかなリズムに
心地よさを感じているのか、笑んでおられますが、のこぎりなんぞを持ち出して
太い枝を落とそうもんなら、そのほほ笑みが引きつり少々青ざめてくるのです

「込んでいる枝を抜いて、日当たりと風通しを良くして・・・」との説明に、
一応納得はされるのですが、さっぱりした木の姿と地面に落ちた枝数の
多さを見比べ「この木、枯れませんか?」と聞いてきます



お客さんの庭にコデマリが二、三株ありました
今が盛りと咲き誇っていましたが、ものすごく暴れていた、つまり樹形が乱れていたのです
コデマリは、枝が柔らかな放物線を描いて垂れ下がるのが特徴の落葉低木で、
春から初夏にかけて、その名の通り小さなマリのような白い花を付けます

自然樹形を大切にし放任して育てるので、手入れもさほど必要ないのですが、
株が大きくなり過ぎると、枝が絡み合い独特の風情がなくなります
そのコデマリは、まさにそんな状態でした

こんな時、姿を整えようと下手に枝を挟むと、後々余計に暴れてしまう
では、どのようにしたらよいかと言うと、思い切って荒療治を施すのです

花があらかた終わったころ、根元から出ている新芽を残し、
ほかの枝を地際から五、六センチの所でばっさり全部刈ってしまいます
これは古い枝を新しい枝に切り替えて株を小さくする作業で、
三年に一回くらい行います。

春先に花を付けるユキヤナギやレンギョウなども、この方法で
毎年流れるようなしなやかな枝を維持できます

案の定、コデマリにこの荒療治を行ったら、伐採したと思われたのでしよう、
奥さんは血相を変えて抗議されました
「いずれ新芽が伸びて来年また花を咲かせます。心配ご無用」と
説明しましたが、本当に納得されるのは一年後でしょう

お客さんが、わたしたちを信頼してくれるようになるには最低一年かかります
春夏秋冬と庭木のサイクルを一緒に見守って、初めて
私達の仕事がご理解いただけるのだろうと思っています