「木を生かす」ための剪定

よく、この木は大事だから、枝を切れないと言う人がいます。
でも、そうじゃないんですね。
木を伸びるままにしておくと枝葉が茂り過ぎて姿形が悪くなるばかりではなく、
日当たりや風通しが悪くなり、枝が枯れたり病気や害虫に侵されたりします。
そこで成長を妨げる余分な枝や見栄えの悪い不要な枝を取り除き、
健やかに育つよう面倒を見てあげることが木には必用です
この作業が一般に言う「剪定」です。

庭木の剪定で重要なのは、まず大事な枝とそでない枝を見極めること。
それには、その木がどのように生長していくかを頭の中でシミュレーションする事が必要です
この枝はこの方向に伸びるので、この枝と絡んでしまう。
この芽を残せば、枝は内側へこう伸びておかしな樹形になってしまうので、
その下の外側に付いている芽を伸ばそう・・・といった具合です。

ただし、木の性質は種類によって千差万別です。
同じ種類でも、植えられている環境も違えば、若いか年老いているか、
元気か弱っているかなど、木の状態も違います。
実際の剪定作業は、その木を見て、枝を見て、鋏の入れ加減を調節しているわけです。
これはもう、長年の経験からくる知識と勘とでも言いましょうか、
一本でも多くの木と接することによって、時には失敗しながら培ってきた技なのです。

ずいぶん昔のことになりますが、駆け出しのろ庭木の手入れをしていると、
親方から「そんなやり方があるか!こんな枝の残し方をしたら木がかわいそうだろ!」と、
怒鳴られた記憶があります。
ずいぶんこわごわと、鋏を入れていたのでしょう。
確かに、初めて木の枝を切るのは誰しもが怖いものです。

思えば、この「切る」という言葉が良くないのかもしれませんね。
実際、われわれの間では「切る」は忌み言葉となっており、現場ではあまり使いません。

大工さんのように、材料となった木ならば「切る」でよいでしょうが、
私達は、枝を「切る」のでなく、枝を「飛ばす」「透かす」「抜く」「挟む」「外す」「下ろす」と言います

要するに古い枝を新しい枝に更新して、木を若返らせるのです。
私たちの仕事は「木を生かす」ことにあるのですから。