解説: 私のもう一つの趣味が登山である。 今から10年以上も前になるが、蝶が岳,常念岳を手始めに、双六岳、奥穂 高岳と、北アルプスの峰々を歩き回った時代があった。 「山の写真も良いかもしれない。」と始めたことであるが、カメラ機材の重 さにはどうにも勝てず、また、一時健康を害したこともあって、数年で写真 目的の登山は断念してしまった。 健康を取り戻した現在では、山の空気,爽快感を楽しむ登山、いわゆる中高 年登山の領域を楽しんでいる。 ここに掲載した写真は、1990年、奥穂高岳に登った時のものである。 その日の朝、穂高岳山荘は濃いガスに包まれていた。 山荘を出発して一時間ほどで山頂に到着。案の定、あたり一面乳白色の世界 でなにも見えない。「やっぱりダメか...」ほとんどあきらめ気分の私達 であった。とりあえず何枚か記念写真を収め、小休憩へ。 どのくらい経っただろうか、にわかに回りがざわめきだした。なんだろうと、 あたりを見回すと、なんとガスが吹き飛ばされていくではないか。振り返る と、いつのまにか槍ヶ岳が...。 なんという好運。あわててカメラをセット。シャッターを切った。 濃かったガスが嘘のよう。あっという間に眼下に大展望が広がった。 北アルプスの峰々から、南アルプス,御岳,白山、遠くは富士山まで見える。 悲壮感が漂っていただけに、感激ひとしおであった。 それまでは気がつかなかったが、ふと見ると、頂上直下から今まさにパラ グライダーで飛び立とうとしている人がいる。「エッ! まさか。」 その“まさか”であった。タイミングを見計らって大空にダイブ。 そのカラフルな傘は見る見るに小さくなり、豆粒のようになって上高地に吸 い込まれていった。私たちは、ただただ呆然と見送るのみ。 「すごい人がいるものだ...。」 その後、重太郎新道を下って岳沢小屋へと。小屋に着いたときには、汗び っしょり、バテバテ状態であった。 パラグライダーがうらやましい限りであった。 写真の左端が涸沢岳。右の頂が北穂高岳か。後方には槍ケ岳が見える。 さて、今年はどこに登るか....