アーユルヴェーダにおける季節の過ごし方

《春の過ごし方》

イナムラ・ヒロエ・シャルマ(大阪アーユルヴェーダ研究所所長)


春には3つのドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カパ)のうち、

カパドーシャが人間の身体内にも環境にも 増大する傾向にあります。“春眠暁を覚えず”の諺どおり、朝いつまでも眠く起きにくくなります。

特に子供は一生で最もカパドーシャの優勢になる時期であり、朝寝坊しがちですが、老人にとって春は過ごしやすい季節です。 気温は冬に比べ上昇し、冷たい南風が強く吹きます。このため油断すると春風邪を引きやすくなりますから注意が必要です。
 このような理由により

カパドーシャを増やすような生活や食物は、適度に減らす必要があります。


身体も心も少し倦怠気味になりますから、身体を動かすことを心掛けましょう。ハイキング、遠足、山歩き、旅行、運動会などを大いに楽しみましょう。

“桜の花見”は日本古来からの春の楽しみ方です。

満開の美しい桜の花の下で、御馳走を食べ、陽気に歌い、踊り、冬の間蓄積された体力と余分なエネルギーを消費、発散させます。
 

アーユルヴェーダでは強い催吐法、薬物喫煙、うがい、ナスヤ(鼻腔により薬油を滴下し、くしゃみを催す)を行い、余分なカパドーシャを取り除きます。
入浴後はカパを抑制する沈香、クスノキを身体に塗り、宝石や生の花輪を装着すれば、心に蓄積した精神的カパドーシャを取り除き、きぶんを和やかにしてくれます。


しかし

昼寝は禁物です。

それは、ピッタとカパドーシャを増大させるからです。

眼の縁に眼軟膏(アンジャナ)を塗るのも良いし、

苦味、渋味薬物の煎液で朝夕、うがいをすれば、
口腔、喉を浄化し、

口腔内の分泌物や痰、舌の苔を取り除き、このことがカパドーシャを抑制する結果をもたらします。


 その他、全身を芳香薬物の粉末でマッサージしたり、

硬くなった腕や脚の筋肉を軽く叩くことや、適度の運動によりカパドーシャをコントロールする事が出来ます。


運動量は自分の体力の半分から7割程度に行うのが適量

としています。
 食物についても春にふさわしい食べ方、食物の選び方があります。一般にカパドーシャを増大させるような食物は少な目に、逆に減少させる様な食物は多めに採ります。

油もの、身体を冷やす飲食物、甘味、酸味、塩味の強い食物は控えめに採り、逆に辛味、苦味、渋味の食物は多めに食べてよいのです。

春に出回る野菜、山菜を食べれば自然にカパドーシャを抑制出来るのです。

フキノトウ、ヨモギ、セリ、ツクシ、ワラビ、ゼンマイ、菜の花、ニガウリ等、その地方で取れる野菜や山菜、栽培野菜を毎日食卓に出しましょう。

その地方の野菜でも時季はずれのものや、温室栽培のものは、適当ではありません。

自然は春に苦味や渋味のある野菜を喜んで生育してくれているのです。

 春はカパドーシャ増大のため、人の消化力を弱めます。

そのため

消化力を整えるためショウガ、黒コショウ、ワサビ、芥子、サンショウ、その他のスパイスを頻繁に、また多めに摂取する事が大事です。

消化力の低下、胃腸の働きの低下は多くの病気を引き起こす原因となります。  怠りがちな気分を一掃するため、

環境を変えたり、活発なスポーツ観戦なども心の中にくすぶる精神的なカパドーシャを吹っ飛ばしてくれます。

1999.3.29〈さとわの会情報誌“COSMIC ACCESS”より抜粋〉

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