「Moon」

 

「はぁ・・・」

また、大きなため息をついた

よれよれのコートに ゆがんだカバン

街灯に映し出される背だけは高い男の影は

車が通る度に (あるじ)を 

追い越しては 消え

追い越しては 消え

 

影まで情けないや・・・

また出てこようとするため息を呑み込み

代わりに 空を見上げてみた

あっ オリオン座

それに 月も

まんまるじゃないいびつな月は

どこか、自分と重なって

しばらく眺めていた

        

「もしかして ずっと僕のこと見てた?」

「見守ってくれてた?」

                                           

ありがとうってつぶやきながら

大きな 大きな 夜空を見つめた

ちょっとだけ胸を張ってみた

そしたら気が付いたんだ

春を含んだ風が、さっきからずっと

吹いていたことに