日本一の清流・川辺川で極楽カヌー

 九州は熊本県、子守唄の里・五木村を流れ人吉で球磨川と合流し、八代で有明海にそそぐ川辺川。

 川辺川は98年に環境庁の発表した日本一の清流のひとつであり、その清流で新鮮な苔を食べて育った鮎は「尺鮎」と言われるほどの大きさを誇り、鮎釣り師たちの憧れの的でもある。

 2000年8月、水俣・久木野の愛林館で一泊した後、山越えで川辺川へ。相良村柳瀬の通称「ごんげん河原」にテントを設営し、愛林館特製「激辛タイカレー」の昼食。ピリッとさわやかな辛さで美味いんですわ、このカレー。でも子供には辛すぎるので、お子様用には愛林館のビーフカレーをどうぞ。

 さて昼食の後、廻(めぐり)に移動、観音橋の下にクルマを停めダッキーを膨らませる。電動ポンプを使っているものの、圧をパンパンに高めるために最後の仕上げは手動ポンプを使わなくてはならず、暑の夏い時にはヘロヘロになるぐらい辛いんだ、これが。あー、なんか夏いのを思い出したら頭がぼーっとして字ぃも変。・・・っちゅう訳で、お昼過ぎに観音橋の下からやっとこさ出発。今回はイキナガペアとうちのファミリー、3艇のダッキーの御一行様である。

観音橋の下で、出発の模様 橋の下の出発地点は穏やかな流れで、船を出すにはちょうどよろしい。この観音橋の少し上流には小さな堰があり、その落ち込みのすぐ下に隠れ岩や出っ張り岩などの岩が岩ほどいっぱいあり、また木が倒れた倒木もあって危険が危ないので、初めての方やそうでない方は観音橋から出発するのが具合が良くてよろしい、というのが多くの皆さんの云われるご意見です。よーするにスリルを求めない場合、川辺川はここから出発しませう。

 出発するとすぐに軽く右にカーブする瀬が現れる。右側は広い河原で左に集まる流れは少し落ち込みになっていて見通せない。ちと怖い。でも、左側の流れに乗って突っ込めば難なく通り抜けられます。「わわわっ、ざざーん。ほっ、なーんや。」っちゅうカンジ。

下流から瀬を見たところ 少し浅い流れをごろた石を避けながら進むと、流れは左に大きくカーブする。ここはカーブの直後、本流の真中に大きな岩があり、右側は狭く流れはきついが滑り台のように素直に流れ、左側はねじれ込むように落ち込み、沈覚悟のいやらしい流れをつくっている。水量がよっぽど少ない場合以外は右側の狭い流れがオススメです。でもカーブで上手くフネを操作しないとバウが左に持って行かれ、ダッキーならまあなんとか大丈夫ですが、ファルトやポリ艇なんかだとねじれ沈の可能性大。下手をすると真中の岩に激突した後、ねじれる流れの中へサヨウナラ沈となります。

 上の写真ではよく分かりませんが、赤いダッキーが左側のいやらしい流れに乗ってしまったものの、なんとか沈をまぬがれたシーンです。このあと、2艇のファルトが同じように左に行ってしまい、2艇とも沈してました。それを下流から見ていたワシらが密かにビールで乾杯したのは云うまでもないでしょう。(他人の沈を大笑いしてはいけません(^_^;)。)

 このあとはしばらく穏やかな流れが続きます。ビールを飲んだりするのにちょうど良い流れです。ところどころに岩が現れますが、たいていは遠くからでも見えるので目をつむっていても…目ぇつむったらあかんがな。

永江橋下で休憩の写真 しばらく行くと永江橋が見えます。永江橋の下は広く、クルマを停めるスペースがあり家族連れなんかがよく遊んでいます。ここで休憩するよろし。

Fさん、沈の図 さて、このあと本日のメインエベント、コンクリブロックがらみの3級の瀬が現れます。永江橋から出発すると広がった流れはすぐに左に集まり、ざざーっと瀬の音が聞こえてきます。夏は釣り人が多いのもこのあたり。そのまま本流に乗り、流れのど真ん中を行くのが良いでしょう。すると一段と狭く、早くなった流れは1mほどの波柱を作り、フネはどどーんとバウを突き上げられ、二人乗りの場合、前の人が真上に見えます。左側の岸にはコンクリブロックが一面に置かれ、川底にもブロックがそこそこある模様です。左側には寄らないように気をつけるべし。この瀬でフネが横を向いてしまうと沈の可能性が大です。大きい声では言えませんが一年前にカヌーのベテランであるHさんがここで沈してしもうたのはナイショです。
 なお、2001年夏に同じコースを下った時は、瀬の中央に岩が鎮座ましましていました。2002年夏に見たときも岩を確認しています。かなり危険な場所にあるので、この瀬を下る時は十分下見をしてからにしませう。

 そこから境田橋までは1〜1.5級の瀬がところどころに現れる快適な流れです。このあたりでは川辺川が初めての人も余裕が出て来て、澄んだ水と自然の豊かさをじっくり味わえるでしょう。川辺川ダム関連工事で濁り水の日が多くなったとの話しですが、工事の影響のない時は澄みわたった水の上を進むカヌーの影が川底に映り、まるで空中を進んでいるような感覚です。キレイな水に子供たちも大喜び。しょっちゅう飛び込んでは泳ぎながらカヌーのあとをついてくるのでした。

 境田橋の手前には右にカーブする2〜3級の瀬があります。一番左を行くと少し落ち込みがあって楽しいです。境田橋は地元のミズガキ(霊長類ヒト科:都会では絶滅危惧種)の遊び場で、10mぐらいの高さの橋の上から飛び込むミズガキが多く見られます。ここでも休憩し、少し遊ぶよろし。

境田橋上流の瀬の写真   境田橋下で遊ぶ我が家のミズガキ   境田橋から飛び込みをするところ

 左から:境田橋上流の瀬(99年8月)、境田橋の下でわが家のミズガキ(00年8月)、境田橋から飛び込む地元ミズガキ(99年8月)

 境田橋から下流も適度な流れと1級程度の瀬が時々現れる快適コースです。とても高い夫婦橋をくぐると左にカーブし、そのままのんびりと流れます。夏は鮎釣り師が多いところですが、川幅もありよけるのは難しくありません。流れの狭いところは一声かけるのがマナーです。「よっ、日本一の釣り師!」…という声をかけるんちゃうっちゅうの。

 柳瀬橋を超えると水深はかなり浅く、また岩が多く、コース取りに気を使います。左側が比較的水深もあり抜けやすいようです。そこからキャンプ地のごんげん河原まではすぐ近く。右側の河原には多くのクルマや人の姿が、左側は一面の薮になっています。赤い吊り橋近くで上陸、午後5時過ぎキャンプ地に到着となりました。

柳瀬・権現河原でのキャンプ風景この河原は、道の脇の体育館みたいな建物(相良村構造改善センター)のところにトイレと水道がありキャンプに最適です。でも、河原とは云えあくまでも地元の方の生活エリアですから、トイレと水道が使えることに感謝し、マナーを守ってキャンプをしたいものです。

 また、ここからクルマで10分程度のところに温泉施設「茶湯里」が、その途中にコンビニもあり家族連れのキャンプなどの際にはまさに「持ってこい」の場所ですな。

 おーい、焼酎も持ってこ〜い。


川辺川マップ


川辺川ダムについて

 この清流・川辺川上流にダムを造る計画があります。計画は35年以上も前のもので、ダム建設の目的である治水については、計画の発端となった昭和40年7月の人吉水害をはじめ球磨川上流の市房ダムができてから水位の上昇が早く、より危険になったと水害体験者が訴えダム反対を表明しています。
 もうひとつの目的である利水については、ダムからの農業用水を受けるために用水の確保を要望したとされる受益農家の半数以上が手続きの不当性やダムの不要さを訴えて裁判を起こすなど、既にダム建設の目的を失っていると言えます。
 また地元球磨川漁協では多くの組合員の意向を無視してダム推進派の執行部役員が国土交通省と補償交渉を行いました。しかし、漁協総会で補償受入れが否決されると、国交省は前代未聞である漁業権強制収用の申請を行いました。この申請、国交省が国土交通大臣に申請し、大臣が認可すると言う、第三者の客観的な意見がなんら反映されないおかしな制度。
 2003年1月現在、その漁業権の強制収用の妥当性が熊本県の収用委員会で審理されています。(と云っても補償額が妥当かどうかだけだそうですが。)また、ダムに慎重な姿勢を示している熊本県知事が、国は説明責任を果たすべきだとし、国交省とダム反対派市民との間で住民討論会を開催しています。
 討論会は第5回目までが治水をテーマに開催されました。ここで国交省は、反対派市民のダム代替案を批判するばかりで、肝心なダムの必要性についての「説明義務」を一向に果たそうとしていません。
 6回目以降は環境をテーマに討論会が開催される予定です。
(川辺川ダムを考える住民討論会の詳しい内容は、 http://www.pref.kumamoto.jp/k_river/index.html へどうぞ。)
 多くの住民が環境破壊を心配し、その効果に疑問を感じているダム建設。にもかかわらず、35年以上も前の計画のまま、国民に十分な説明もせずに建設を強行しようとする国土交通省。…もはやその目的は一部のものの利権のためとしか言えないのではないでしょうか?…カヌーイストや鮎釣り師に残された本当に数少ない素晴らしい川を、我々の税金で好き勝手に壊されるのを黙って見ていて良いのでしょうか?

 川辺川ダム反対運動に関して詳しく知りたい方は「子守唄の里・五木を育む清流 川辺川を守る県民の会」のホームページをご覧ください。川辺川ダム反対にご協力をお願いします。

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