哀しみの木津川

笠木で出発前に撮った写真◇とても綺麗とは言えない川だった。三重県に端を発し京都府を経て大阪にそそぐ木津川。京都府笠置町。上流にダムを持ち大規模住宅地を流れて来た水は、もはやここでは黄緑色と化していた。'98年7月、笠置大橋下。アユ釣りをしている釣り人に話しかける。曰く、「今年は特に水が汚くなったなあ。前まではもっと綺麗かったのになあ。ここから下は釣りしてる人もあんまりおらんわ。」

◇午前10時半、笠置大橋下を出発。今回は職場の奥野くんとタンデムである。カヌーが初めての奥野くんをファルトの前席に座らせ、何も教えずにいきなり漕ぎ出した。直後、「あー、なんか岩ありますよー。」との声。「しもた、隠れ岩に注意することぐらい教えとくんやった!」と思っても後の祭り。我がファルトのキールは岩に乗り上げ、ぐらっと傾いたあと、股の間から水が噴き出て来た。とにかく上陸地点までと漕ぎ下り、少し先の河原に上陸。ガムテープで応急処置を施していると、1艇のゴムカヌーが下って行く。手を振って挨拶を交わしたが、平日ということもあり、この川でカヌーに会ったのは、この日結局これっきりだった。

◇それにしても、ガムテープはえらいもんである。二重三重に貼ると水漏れはぴったり治まった。さあ、気を取り直して川くだり…、しかし汚いなあ。黄土色になったり黄緑色になったりする水が、波のある所では白い洗剤の泡をつくっている。水深は浅く、平均40〜50cmであろうか。その川底でさえ見えない。川幅は全体に広いが、その分浅瀬が多い。時折、底が透けて見えるとファルトにとっては危険な水深である。二度三度とライニングダウンを行なう。足にまとわり付く黄緑色の水がうとましい。

◇カヌーのガイドブックによると、笠置大橋下のテトラの瀬と少し下流の千本杭に注意とあったが、水量が少ないせいか、どちらも右岸ぎりぎりにほんの少しあるだけで、よっぽど右岸寄りを通らない限りダイジョウブなのであった。かえって、それを気にしすぎて左岸寄りを行くと浅瀬や隠れ岩に引っかかりやすいかもしれない。

◇恭仁大橋を越えると右手に広い河原。そこで上陸し、カップメンとおにぎりの昼食をとる。それまでに釣り人は4人。アユを釣っているのだろうか?しかし、友釣りではなかった。コロガシ釣りというやつか?どっちにしても、釣れても食う気がしない川である。

木津川でカヌーを漕いでいる写真そこから泉大橋までは水深も少し深くなり、ライニングダウンの必要もない。中州が現われ、水路が分かれてからはなるべく左寄りを行った方が水深もあって良いようである。川の周辺に建物が増え、川沿いの交通量が増し、これ見よがしの護岸があらわれると泉大橋である。泉大橋下、左岸近くには思わぬところにコンクリートブロックのようなものが沈んでいてドキっとさせられる。午後2時半、泉大橋下流の左岸に上陸。なぜかやたらに磯臭い。そういえば、笠置大橋下流でも磯臭かった。ノリでも繁殖しているのか?

◇ここから下流をやる気はなく、河原でビールを飲みつつファルトを乾かす。この河原からJR木津駅まで、パッキングしたファルトを運んだ時に役に立ったのがコマ付きキャリー。2km足らずであるが、焼けるように暑いアスファルトの道を担いで歩くには、ファルトはあまりに重いのだ。(しかも、荷物になるライフジャケットは着たまま。)…「明日になら担いでやろうあすファルトの道」

◇JR関西線は加茂駅でディーゼル車へと乗り換える。これが一両編成のワンマンカーで、ギアチェンジをしながら山の中を走るのである。眼下に下ってきたばかりの木津川を見ながら気がついた。汚い川は、底が見えないから深く見えてしまうことに。笠置駅から河原のキャンプ場まではすぐ。置いておいたクルマに乗り込み、「あー、早く風呂に入りてー。」と思う二人であった。

木津川マップ
木津川マップ


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