一物全体

今回もことわざのお話です。
 「一物全体」とは、ひとことで言えば、食物はまるごと食べなさい、ということです。 動物なら頭から尻尾まで、植物なら葉っぱから根っこまで、全体を食べることで必要な栄養分が確保できます。
 野生の動物は、意識している訳ではないが、本能的に一物全体を実践しており、決して栄養失調になったりしません。 とは言っても、まさかライオンがカモシカの頭から尻尾まで丸呑みはしませんね。でもライオンは最初に臓物から食べます。 草食動物の臓物には、ライオンが消化できない植物も含まれています。(もちろんカモシカが消化してくれたものが….) つまり肉食のライオンも必要な野菜は食べているのです。
 人間はと言えば、肉にしても、魚の切り身にしても、野菜にしても食べるのは部分であり、 主食の米でさえ、胚芽やぬかなどの栄養素は全て捨てて、虫も食べない米のカス(白米部分)しか食べません。 人間も、いろんなものをバランスよく摂取していれば問題ないのですが、大抵は偏食になっています。
 大根やにんじんは葉っぱも一緒に食べる、野草のタンポポなどは根っこも茎も葉っぱも花も全て食べる、 煮干や目ざしは頭から尻尾まで食べる、米は生きた玄米のまま(せめて胚芽米)食べる、 砂糖なら精製していない黒砂糖のまま食べる、などを心がけることで、必要な栄養素を摂取できます。
 それから納豆や味噌、醤油、漬物などの発酵食品の摂取も、不思議なことに一物全体を実践していることになるのです。 なぜかというと、発酵食品に含まれる酵母菌も目には見えなくても立派な動物だからです。 とりたてて肉を食べなくても、発酵食品を食べていれば、必要な動物性蛋白は摂取できているのです。 納豆などが体に良い訳がわかりますね。
 先人の知恵が凝縮された日本食には、今更ながら感心させられます。