3つの心臓

「私たちの体には3つの心臓がある。」と言うと、どう思われますか?
 何をたわけたことを!それじゃ化け物だ!
 確かに物理的な心臓は1つしかありません。ところが、人間の血液循環の仕組みを考えると、 心臓ひとつではとても説明がつかないのです。人間の血管の長さは毛細血管も含めると、 想像もつかないほどの長さ(数千キロ?)があります。
 血液を全身くまなく送り込むためには数トンのポンプが必要になるそうです。当然心臓にそんな力はありません。 ではなぜ?
 大木はポンプもないのに水を根から吸い上げ、葉っぱの隅々まで送り込みます。 ご存知「毛細管現象」、というより葉っぱ自身が水を引き寄せている、と言ったほうが正解かも知れません。 人間の場合も同様、心臓が血液を送り込む、というより細胞が血液を吸い寄せている、といえます。
 植物は送り込んだ水は葉っぱから蒸発するので戻る必要がないのに対し、 人間の場合は送り込んだ血液はまた心臓に戻ってくる必要があります。血液が戻ってこなければ、当然新しい血液も送り込めない。 これは動物も同じですが、四足は頭も足も心臓と上下差が殆どない。つまり比較的簡単に血液が戻ってきます。
 ところが人間は立ち上がったがために、心臓との上下差が広がり、血液の戻りが悪くなってしまいました。
 血液を送り込む方は、心臓のポンプ作用と細胞の吸引力で殆ど問題が生じない。問題は戻り(帰路循環)。 頭は心臓より上にあるので簡単に戻る、つまり血のめぐりがよい。・・・・人間の脳が異常に発達した理由はこれにある。
 足はと言えば、心臓より下にあるので送りは順調。ただし戻りは重力に逆らうため自然には戻れず、何らかの力が必要。 心臓のポンプ作用は戻りには力不足。(人間の多くの病気の原因がここにある。)
 前置きが長くなりましたが、3つの心臓の残り2つが、ここで登場します。ひとつが「足心」(土踏まずのこと) 他の1つが「丹心」(臍の下:腹筋)、どちらも心臓の「心」がつくのが面白いですね。
 まず足心、これは歩くことで働きます。足の筋肉は歩くことで収縮/弛緩を繰り返します。 筋肉の収縮で静脈を絞り血液を上方に押し上げます。静脈弁で血液の逆流が防止されるため、 筋肉の収縮/弛緩を繰り返すことで血液の帰路循環が確保されます。
 次は丹心。足心の働きで血液はお腹まで戻りますが、肝臓でエネルギー源や栄養素を取り入れながら、 お腹から心臓まで送る仕事は丹心(腹筋)、具体的には横隔膜の上げ下げ(複式呼吸)が担います。
 血液循環は、抵抗力、免疫、栄養補給、疲労回復、細胞活性化等、人間の生命を維持するための最も重要なシステムです。 血液循環が円滑に行われるだけで、大抵の病気は回復します。
 3つの心臓の意味、少しは分かっていただけたでしょうか?