遠い道


あれほど
夢中で見ていた夢も
すっかり忘れて
朝食をとり
髭を剃る
髭を剃っていると
鏡の中の俺が
思い出すのだ
考えるのだ
想うのだ
おまえの眉
おまえの指
そして


目が見ている
おまえの目を
空を樹を風を
そして
水を

それから
遠い道を
裸足の少女が歩いてきて
わずかな瞬間
俺にこう尋ねるのだ
「愛って
 何?

by Kenichi Asano


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