「11月のある日」 大萩 康司


 

〜若きギターの詩人・大萩 康司〜

11月である。10月でも12月でもない。ましてや8月や9月でもない、11月なのである。 そして、ある日なのである。1日と15日とかではない、単なる「ある日」なのだ。 となれば、これはもう、どうしようもない。逃げることは許されないのだ。 ただひたすら聞き入るしかない。そして、切ない恋の思い出や 失われた日々に思いを馳せるしかないのである。
大阪は梅田のタワーレコードでこのCDを発見した時、妙に若く、 リラックスした青年のジャケットに目が止まった。 そして、よせばいいのに、タイトルに目が行ってしまった。 そこには、「11月のある日」と書かれているではないか! もう、このタイトルを見てしまった以上は、手にとって見るしかない。 しかも、その横手に「試聴できます」の一言・・・もう、これを見てしまったら、 聴いてみるしかないのである。よせばよかった。 後悔先に立たずとはよく言ったものだと感心するのだが、聴いてしまったからには、 これはもう、直ちにレジに向かうしかないのである。
本当にすばらしい演奏である。とにかくすばらしい。 単に楽譜を音にしました、という演奏ではない。 全てを自分の音楽として表現している。音の一つひとつに心があり、そして、余韻がある。 音と音の間の空白をも聴かせてしまうのだ。それはまるで、濃縮された詩の世界である。 若干22歳にしてこのテクニックと高い音楽性は何だ!まったく信じられない世界だ。

収録作品は、ブローウェルの曲「11月のある日」から始まり、 同じくブローウェル編曲のバロック作品、前衛的な作品ありと、 いろいろ聴かせて、最後は再び編曲もの、ビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」で終わる、 まさにブローウェル・オンパレード。とりあえず、ブローウェルという作曲家の周辺は 一通り見渡せるという形になっている。
ぜひ、一度は聴いておきたい演奏家の一人であるし、これはそのデビューCDということで、 貴重な一枚でもある。

「11月のある日」 大萩 康司
大萩 康司 (1978〜) Guiter

 大萩 康司, ギター
†レイ・ゲーラ, 第2ギター(インプロヴィゼーション)
*ヘスース・オルテガ指揮
 ロサ・マトス, 第2ギター
 アレハンドロ・ゴンサレス,第3ギター
 ジョエル・サン・マルティン, 第4ギター

Digital 20bit Recording
Recorded on August 17, 1999 at EGLISE LUTHERIENNE DEBON-SECOURS Paris
Recorded on May 18-21, 2000 at ABDALA s.a. Habana, Cuba
2000.9.21/VICC-60176/\2,900(税抜)

http://www.jvcmusic.co.jp/ohagi/index.html
このサイトに大萩さんの写真と音声メッセージがあります。

By Kenichi Asano Dec.2000

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