12、 HOW TO 編 (ウンチクなど)
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3,  HOW TO 編 うんちくetc
  その前に・・・
 塗装の値段って(どんな作業でもそうですが)出来る人にとっては高く感じられ
ますよね?バイクは特に車体の値段が値段なのと、車に比べて面積が小さい
為、適当に新聞でくるんでカンスプレーで塗ったらいいのではないかと思われが
ち・・・最近じゃD社あたりから純正色のスプレーもでていますしね。そうなんで
す、このカンスプレーってのがわれわれプロにとっても最大のライバルなんで
す、じつは。最初に戻りますと、塗装の値段をこのカンスプレーを元に計算され
るお客様が非常に多いのです。私が見積もりしますと、(一缶1000円〜2000
円程度のカンスプレーを使って計算すると材料代がだいたいこれくらいで・・・う
ー高いやんけ!)ってな感じです。
 さてここでウンチクに入る前に物の値段の話をさせて下さい。別の場所でも述
べましたが、私は以前自動車の鈑金塗装をしておりました(話それますが、意
外と知られていないのですが自動車の鈑金って金ヘンなんですよ。木ヘンでは
ないので念のため・・これもウンチク(^^;)?
 ここで自動車保険を使っての値段を例に出しますと,ドアミラーの片方の塗装
代が一つ(片方)パールマイカ色で10000円ほどします。というか保険請求で
10000円もらえます。ちなみに脱着工賃別です。勿論ケースバイで、地域(都
市圏は高いですね)やどういう状態かによりますし、保険の場合部品交換にな
る場合が殆どです。ではこの値段の内訳ですが、単体で塗るとして材料代が1
〜2000円ほど(色によって値段はかなり違います。)調色手数料が4〜5000
円、あと養生(マスキング)料、塗装技術料、分解整備費等が加算されると
10000円位になります。色を塗るといってもプロは、分解できるところは全て分解
しますし、塗料は毎回いくつもの色を調合して一つの色を作るわけです。色も合
わせなければなりません。あと設備も要ります。ま、値段なり(以上)のことはし
ていると私は自負しておりますが・・・
 
  これから紹介しますHOW TOは幾通りかある方法のほんの一例でありま
す。先に言っておくと何が正しいと言うことはありません。もひとつ言うとそりゃ
間違いじゃないか?というものがあることも事実です。
 ではキズを直す流れを紹介します。今回は幾つかある方法の中から切開法で
直して見ます。あまりにもヘコミが大きいからです。

@、まず直す場所を確認します。敵をしらなくては手が出せません。次に部品の
取り外しです。最終色を塗るのに邪魔なものは全て外します。このタンクの場合
お客さんが中古で買ってきたバイクのようなので、すでにカスタムペイントが施
されていました。
(注)絶対にガソリンは抜いて乾燥させます。  

A、当店の場合代表が元鈑金屋であったこともあり鉄板のヘコミのままパテを
付けたりはしません。まずは鉄板を元の高さまで 「出す」 作業をします。ところ
がこの様にバイクのタンクなどの場合、通常裏側から叩きだすことが出来ませ
ん。いわゆる、あて板、ハンマーが使えません。そんなら使えるようにすればい
いだけです。まずキズを入れてはいけない所にマスキングテープをはります。テ
ープは、何も塗料を仕切るためだけのものじゃありません。このようにノコのガイ
ドにも使います。そして思い切って底に穴を開けました。こうしてみると中は綺
麗です。エア抜き用のパイプが通ってたりします。


B、手さえ入ればこっちのモンです。アテ板ハンマーにて叩き出します。おおま
かには、何か木などで叩きだしておき、低い所に当て鈑当てて、高い所を叩くと
いう作業を繰り返します。ある程度出てきたら一度サンダーで擦ってみます。こ
うしてみると鉄板の出ている所がまだ高いわけです。ここで次に絞り作業に入り
ます。ハンマーのフェイスがギザギザの、これが絞りハンマーです。これを使っ
て高いところを叩いて落とすと。本来アセチレンガスや電気熔殖機を使って熱を
かけてこの絞りを行うとより効果的なのですが、タンク上面は空気に触れている
時間が長いため、出来るだけ熱を入れたくない意図があり、あえてその作業は
しませんでした。今回この作業にはここまでですでに3.5時間くらいかかってま
す。

 こうやって一見出てきた面も必ずパネルの「コシ」と呼ばれる所が残ります。そ
れをハンマーで叩いて落とします。
 ※パネルの「コシ」・・・一度ヘコんだパネル(鉄板)は必ず伸びてます。つまり
もともと真っ平らの所がヘコむと横透かしに見ると「く」の字になってるわけです
よね。例えばコーラの缶の横腹を親指で軽く潰してみて下さい。この時横に膨ら
んだ所を「コシ」と呼んでます。では次に今潰した缶を元に戻そうとしてみて下さ
い。今あなたが押したところです。
 さてコーラの缶は元にもどりましたか?よく見て下さい。必ず潰したところの周
りにシワが残っているハズです。つまり一度ヘコんだパネルは必ず距離が伸び
ているのです。
C、そこで先ほどの「伸び」を縮めてやる作業をします。これを「しぼり」とよびま
す。これは金属に一瞬にして熱をかけ、冷めるときに起こる収縮を利用して行い
ます。今回は熱による絞りは行いませんでした。

D、この時点でほぼヘコみはなくなり(つまりタンク容量はほとんど変わりませ
ん)ましたが、より平滑にするためにパテを入れます。すでに先駆者がいます
(黄色い部分)。
 最初に開けた穴をここらで閉じておきます。まずは溶接してサンダーでビート
を削り、パテをしておきます。基本的に溶接で穴は塞がれてますが、それでも小
さな穴が開いていることもあります。とりあえず、表から目止めをします。
 次に溶接して酸化している箇所への錆止めと、内側からのシーリングを兼ね
てスッペシャルブレンド液(企業秘密?)を流し込みます。これでまず安心。

E、パテは最初硬い物に始まり柔らかいものに移行します。写真はアルミパ
テ。パテを研ぐ作業は機械を使ったりもしますが、最後は必ず手で触り、凹凸を
確認しながら手で研ぎます。慣れてくると30ミクロンの凹凸が分かると言われ
ています。人間の手ってスゴイですね。
 先程のパネルのコシがまだ残ってました。指差してる部分。再びハンマーで落
としてからポリパテをいれました。
 ここらあたりから大抵のボデーショップで塗装屋の仕事になります。通常、鈑
金担当者と塗装担当者とに分業されています。
 サフは基本的にパテの付いている部分や鉄板の出ている部分だけでOK.
H、これはサフェーサー(プラサフ)を塗ったところです。サフは#600位の耐水
ペーパーで研ぎます。パテの巣穴と呼ばれる小さな穴は「拾いパテ」「薄付けパ
テ」で埋めます。これはゴムヘラ等を使って、ギュッっとしごく様に入れます。見
落としがあるといけないので全体に。
 
 サフェーサー(下地)はと当店ではラッカータイプと2液型のタイプを使用してい
ます。

 まず裏側から塗ります。乾かしてから、表へ。
I、ここから塗装作業です。このタンクの場合2色+クリアー3色塗りますが、最
初にホワイトを塗りました。まずは裏側を仕上げておきます。予め調色しておき
ます。調色は必ず、昼間太陽の下で行います。直接日があたらなくてもいいで
すが、光の波長の関係で、蛍光灯や水銀灯の下で調色しても、色が合いませ
ん。ラメ当入っている場合は直接日にかざすこともあります。
 今回は先に赤を塗りました。両方ともソリッドカラー(ラメが入ってない色)なの
で捨てクリアーは塗りません。
 補修の場合メーカーや元の色の重なり具合で塗る順番を決めます。シルバー
等のメタリックやパール、パールマイカなどの、いわゆるラメ入り色は必ずその
都度クリアーを塗装します。捨てクリアーとも呼ばれています。なぜ捨てクリアー
が必要なのか?
このようにテープの跡がわかりますか?
 後から行う作業と隔離するためです。例えば次の色を塗るためにマスキング
テープを貼りますが、剥がす時に表面のラメまで一緒に持っていかれてしまい
ます。つまりテープの跡が残るのでマズイですよね?アマチュアの方でよく最後
にまとめてクリアーをかける人がいますが、勿論問題無ければいいのですが、
良く見るとテープの跡が残っていたりします。粗めのメタリックは要注意です。そ
れと「ブツ」「ごみ」が付いたときに#1000以上のペーパーで取り除きますが、
例えばメタリック等塗ってる途中ならいいのですが、(実際我々は「中研ぎ」とい
ってあまりごみが多い場合塗装中でも表面が乾くのを待ってからペーパーで取
り除きます)色が塗り終わった状態ではペーパー等で触ることはしません。必ず
跡が残ります。これもクリアーなら#1000以上ならOK。
 この捨てクリアーですが1〜2コートでOKです。あまり厚く塗ると次の作業に
移るのに乾燥という時間がかかりますし。あとで段差も大きくなりますので。
 これで色はとまりました。
J,もう片方の塗装です。ここではボカシについて。まず根本的に色が合ってい
ての話ですが、まず色とめをします。あわてず時間をかけて行います。次に三
割程のシンナーを入れて周りを馴染ませます。さらに3〜5割のシンナーで先ほ
どの更に外側を馴染ませます。
  これは、タッククロスと呼ばれる、布に接着剤をしみ込ませた特殊な布です。
これは塗装前のゴミ取りや、ボカシ作業での余ったミストを取り除いたりするの
に使います。おおよそ殆どの塗装屋さんが使っていると思います。
K,カンスプレーなら?
ボカシ剤を使ってのボカシ方。カンスプレーでも売ってますが、あの説明書きだ
と不十分だと思うので、私が上手い活用法を・・・
 T、色を留めます。この時きれいなウエス等で周りに散っているミストをふいて
おきましょう。
 U、つぎにボカシ剤先程塗った周りにハーフウエットでボカシ剤を塗布します。
たれやすいのでかけ過ぎに注意しましょう。それから色のスプレーを最初に塗
ったときより少し離し気味でふわっとかけます。
 V、少しおいて、さらに周りのミストを拭き取ってから同様にボカシ剤をハーフ
ウエット、色を更に少し離してパラッとかけます。どうですか?きれいにボカシが
できていますね。あとはクリアーを塗装して仕上げます。
 最終クリアーをかけたところです。
L,  段差を少なくする為に軽く#1000以上ですります。クリアーを塗装しま
す。当店では10:1のウレタン系クリアーを使ってますが、お客様の希望で更に
上級のクリアーも用意しております。乾燥したらゴミ、ハジキが無ければOK、あ
れば#1000以上のペーパーで削りコンパウンドで磨き仕上げます。ハジキは細
い針金やゼムクリップ等でクリアーを一滴落して、乾いてからあて木に#1000
のペーパーまいて削ると良いです。

 このように木などに1000番以上のサンドペーパーを巻きつけて水をたっぷり
つけて、塗装面に付着したゴミやブツを取り除きます。


 これは先程ペーパーで付いたキズをコンパウンドで磨いているところです。元
は電気のポリッシャーを使っていましたが、2003年頃、コバックス社から出たエ
アーポリッシャーが小型で高性能なため近年は専らコレです。ウチにある道具
の中でも高額な方です。5万くらい。コンパウンドは当然粗目から細かいものへ
移行します。最近じゃコバックス社のバフレックスという超細かいサンドペーパ
ーフイルムも併用してます。これは3000番相当。作業時間の短縮など使い方
によっていろいろ使えるスグレものです。

 

 これで完成です。今回タンク修理のついでに、前後タイヤ交換 チェーンスプロ
ケット交換、Rサス交換(オーリンズ)車体清掃です。


その2 引き出し法
 
 先に述べた切開法と基本的に作業の流れは同じですが、裏からでなく、表か
ら引っぱり出す法方です。

 いつものように場所を確認し、塗装をめくります。次に、この機械、スポッター
とか、溶植機などと呼ばれていますが、これを使います。

ここれは、スライディングハンマーと一体になっているタイプです。よくワッシャを
溶接してして引っぱりだすなんて話きかれますが、同じことです。基本は「の」の
字を書くように引き出します。バイクのタンクは鉄板が厚く硬いのでなかなか出
てきません。

例によってパネルのコシを落とします。本当は引っぱりながらこの作業を行うの
がより効果的です。


 だいぶ鉄板が出てきました。

穴の開いたところは板金用ハンダで埋めます。

パテを付けたところです。あて木を使ってパテを研いでいるところです。必ず手で触って凹凸を
確認します。

サフェーサーが入りました。赤い部分は拾いパテです。今回は元の白いライン
はいらないということでしたので剥がして全体にサフを入れました。バイクのタン
クのデカールやライン、グラフィックなどは、大抵クリアーの下に閉じ込められて
いますので、この処理が結構大変なんです。殆どの場合削り落としてパテを入
れます。その後このようにサフを入れて研ぎ直します。

上塗りをしたところです。乾いたら磨いて完成です。
 

 完成!

 さてここで材料のウンチクを少し・・・・・・当店では主に国産の ロックペイント 
製のものを使用しています。おそらく私を含めて、多くの日本人は日本製、つま
り Made in Japan.の文字を見ると心なしか安心しませんか?事実、自動車、オ
ートバイ や電化製品など、数えたらきりがない程のMade in Japanが世界中の
トップで活躍しています。私の友人の一人は、アフリカの、日本人なんか来た事
無いような山奥で、トヨタのランクルが走っているのをみて妙に ホッとしたそう
です。現地人にこの車を作った国から来た、と言うと歓迎されたそうです。3万
キロオイル変えてないのにちゃんと走ってるって・・・(笑)・・あまり笑えません
が・・・横道それましたが、こんなにスバラシイ日本製ですが、こと自動車の補
修業界では残念ながら欧米に置いてかれています。特にヨーロッパの材料は
すばらしい!の一言。例えば塗料、PPG社の製品などはメタリックの缶のふた
を開けたときに感動します。メタリック(通常アルミの粉です)が底に沈んでない
のです!つまりどういうことかと言うと、メタリックとそれをとりまく樹脂の比重が
変わらない・・もっというとムラになりにくいということです。すなわち今日初めて
スプレーガンを握ったビギナーでもメタリックをムラなく塗れるということです。こ
れすなわち何年もかかって体得した職人が要らないということです。勿論この作
業だけに限っての話です。私は職人を否定しませんし自分自身そう呼ばれる人
になりたいです。このように外国製材料はスバラシイのですが、やはり値段
が・・・先に述べたサフェーサーなどは国産の倍はします。特にRM社のサフは
一度使うともう他は使えないと言われています(ていいながら私は金が付いて
いかず渋々国産に戻りましたが)。ちなみに私のつかっているロック製の物でも
モノによっては上塗りより値段が高いです。下地が高いって以外でしょ?ま、そ
うは言っても技術と時間があれば解決できない問題でもないので私は国産使っ
ていますが。


 あとカンスプレーですがこれは国産の方が良く出来ている様に思います。特に
(あくまで私の見解ですが)ソフト99シリーズはカンスプレーの中も種類、性能
共に他社に比べて優れているように感じます。スプレーガンを基準に考えると一
番トリガー(ボタン)の微調節も効くしガスの圧力も安定しているように思いま
す。ノズルも良くできています。最近タッチペンを使ってスプレーできる小型のタ
ッチスプレーってのもあるようです。
 ホルツ社(の方ごめんなさい)は、ちょこっと塗るのに量的にちょうど良いことと
色の種類はこっちの方が多い様に思われますが半押しが効きにくいようです。
ガスの圧は高いのに半押しにすると霧にならずツブツブになります。これは私
が外国で見かけた同社のものとも同じようでしたので、基本は外国製なのか
な?しかしケミカル類はいいものがたくさんありますし、私も愛用しております。