Aguilar DB359
DB659

Aguilar DB359

Aguilarは"Ampegよりも真空管の使い方が上手"だと言われ、チューブアンプによりその評価を確立したメーカーであることから次第に本物の真空管を使用したAguilarを使ってみたくなってきた。ただし現在ではAguilarのフルチューブアンプは製造中止となり、手に入れることは非常に困難である。またフルチューブとなるとバイアス調整などを含めて、メンテナンス面や取り扱いがデリケートなことや重量面を考慮しなければいけない。

そうこう考えていた頃に、遂に憧れのフルチューブアンプのDB359を手に入れる機会に恵まれたわけである。今回はChicagoからの取り寄せであったが、悪名高いFedExでの配送に開封してガッカリした。ラックの耳が折れ曲がり、なんとも残念なお姿、、、。

まぁそれはそれとして、まずは音が正常に出るかどうかチェックすることにしたわけだが、海外の117V圏の製品を100Vで使用することになるのでバイアス調整から始めた。マニュアルにある通りに30分の暖機運転の後に、背面の測定端子にテスターを接続してトリマーで指定された数値に設定し直した。ここで初めて音出しを行ったわけだが、すでに夜も更けていたので小音量でのチェックに留まった。但しD.I.からの出力はNG(汗;)。

内部を観察してみた。パワー管はブランド名が解らないものの、4本のマッチングが取られた代物。117V仕様の電源部はライブハウスで使う以上は国内仕様の100Vに変更したいところ。どうにか出来ないものかと電源トランスをチェックしてみると、高級オーディオの世界でも非常に評価の高いPlitron社製のカスタムトランスが採用されていた。ラベルに0-100-117Vと表記されていて一次側は100Vのタップが選択ができる仕様なので、現状117V配線に接続されている電源を100V配線に繋ぎ変えることで国内仕様のアンプに生まれ変わらせることが出来た。

音色に関しては非常にクリアで且つ生々しい出音は素晴らしく、Aguilarの本領発揮といったところ。通常ドンシャリならばミッドレンジの芯となる部分が欠落している楽器も多いのだが、Aguilarに関してはしっかりと芯も感じ取れる音色である。Aguilarのアンプはデフォルトで"Aguilarが求めた音"が出るように設計されているそうで、イコライザーはほぼフラットの状態でまさにAguilarらしい音色が出力される。ゲインを歪む手前まで上げてやるとウォーム(メーカーでは"クリーミー"と表現している)なサウンドになってくるのだが、更に上げていくと突如クリップしたようなぎこちない歪んだサウンドになってしまう。故意に歪ませるという使い方はあまり得意ではないようで、そういった場面では潔く歪み系のAGROペダルなどを使用した方が賢明であろう。 また真空管独特のコンプレッションされた音色はアタックの強い音(スラップ時のプルなど)ほど鮮明に現れ、なんともいえない心地良いサウンドが出力されAG500とは明らかな方向性の違いを感じる。AG500やDB659+CS200Xで味わった音の硬さも無くて、柔らかいながらも反応スピードの速い音の立ち上がりに感心した。音量的には200Wというスペックから一抹の不安はあったのだが、実際のところは必要充分である。チューブアンプの体感音圧はトランジスターアンプの3倍程度といわれていて、スペック的には500WのAG500よりも遙かに力強く感じた。

コントロールはTREBLE、MID、BASSとVolume(Gain)、MASTERと至ってシンプルである。加えてDEEP / BRIGHTというスイッチが設けられていて、低域と高域をそれぞれブーストすることが出来るのだが、オイラはどちらもオンにした状態で使用している。更にエフェクトループとEQのPRE / POSTが選択可能なD.I.機能も内蔵はされているが、こちらに関しては今のところ故障中でもあり使用する予定はない。インプットはACTIVEとPASSIVEの2系統が用意されているのだが、どちらでも良いということではなく指定された側に正しく入力する方が確実に良い結果が得られる。

唯一の難を挙げるとパワー管を寝かせたことにより非常に奥行きがあり、一般的に販売されている2Uラックでは収納できないこと。また、放熱や重量の問題もあってなかなかの曲者である(笑)。

とにかく至る所に最高級のパーツが使用されており高価になってしまうのも頷けるのだが、いくらなんでも約60万円という価格は普及価格帯ではない。ベースアンプにこれ程の投資を出来るのは、プロの中でも一握りかもしくはオイラのような変わり者だけではないだろうか?

2011.8.27
初めてライブに持ち込んで使用してみた。キャパ40人程度の小さなライブハウスで電源は細い家庭用のテーブルタップであったが、特に問題もなく1ステージを楽勝でクリア。"Master"は9時方向ながら充分な音量を確保できたので、もう少し大きな会場でもまだまだ出力的にも余裕があるように感じた。耳に心地の良い音色でT410ULとも相性は悪くないように思う。
 


D.I.修理

評判の高いJENSEN製トランスを使用したD.I.部だが、残念ながら入手時には機能していなかった。ということでチェックを行ったわけだが、JENSENのホームページで見付けたサンプル回路図の通りながらまったく機能せず。トランス自体の導通をチェックしてみたがこれも問題なし。こうなると入力の基板内におかしな所が隠れているんじゃないかと辿っていくも、特に問題となるような箇所は見当たらない。最終的に正常に動作しているDB659の配線をチェックするしかなかったのだが、7本ある配線のうちの白い配線は結線しないことが解った。どうやらサンプル回路図自体がAguilarのアンプ設計にはマッチしていなかったようだ。前ユーザーか修理業者の手で間違った配線(同じサンプル回路図を見たのか?)が施されていたようである。配線をDB659と同様に結線することで問題なく動作することとなった。


電源電圧の変更

我がDB359はアメリカから個人輸入したために、電源電圧は117V仕様である。本来の性能に出来るだけ近付けるべく昇圧トランスの導入も考えたが、出来るだけ機材の増加は控えたいので改造することで何とかならないものかと考えていた。到着を待って本体のトランスを調べたところ、1次側には117VAC以外に100VACのタップ配線が出ていることが解った。ということで基板に半田付けされているAC電源の配線を117VACから100VACに繋ぎ替えることで、国内であれば何処でも普通に使用できるようになったわけだ。
換気用ファンは117VAC仕様だがこれは117VAC側に接続されているので、電源トランス自体がステップアップトランスの役割も果たすので問題なし。


コンデンサーの換装

到着時より変形(左図)していることを認識してはいたが、まあ動作していることだしと放っておいたコンデンサー。ところが実は凹んでるのはかなりまずいらしく、内部で修復電流が過剰にかかり修復作用で水素ガスが発生し天面での膨れとなるらしい。最終的には気化した電解液によってコンデンサー自体がパンクし、漏れ出した電解液により基盤が腐食(浸食?)してしまうらしい。

このまま放っておくのは具合が悪いとのことなので、ある方の協力によりサイズの合うコンデンサー(右図)を手に入れた。DB359は電源・プリ・パワーの各部が独立した基板にて構成されているので、比較的交換は容易であった。

残る唯一の不安材料を払拭出来たので、精神衛生上も非常に快適になったと言える。

DB359