真心の写経
光明
 
 私は大阪の商家に生まれ、ひとり娘として両親の愛情を受けて
 大事に育てられました。
 いつも可愛がってくれていた父が胃癌で亡くなったのは、
 私がまだ22歳の時でした。

 深い悲しみの中、お葬式をして、その後一周忌、三回忌、七回忌などの
 年忌法要を菩提寺のお寺さんにお願いし、毎年お盆の時には
 お墓参りをしていましたので、先祖供養はちゃんと出来ているつもりでいました。

 そして父が亡くなってからもう50年以上もたっていますので、
 成仏しているものと思っていました。
 ところが、照真正道会に通うようになって、観音様の御教えに出会い、
 『亡くなったご先祖が成仏するには子孫の供養がとても大切である』
 ということを知りました。

 40歳代で若くして病気で亡くなった父のことが気になり、光海先生にお願いして
 命日供養をして頂いたときに、父の状態をお聞きすると、
 「苦しんでいるわけではないが、まだ幽界でのんびりとしていて、
 自分が死んでいるということが分かっていないような様子です。」
 と教えてもらいました。

 それから、毎年祥月命日の日にはお供養をお願いするようになったのですが、
 父の状態はほとんど変わりませんでした。

 「地獄で苦しんでいるご先祖の供養も大変ですが、それ以上に幽界にいるご先祖に
 目覚めてもらうことはもっと大変なことです。
 このご先祖のご様子は、子孫であるあなたの心の写し鏡です。
 本当にご先祖のご成仏を願うのであれば、あなたの場合は毎日1枚、
 このご先祖の為に心を込めて1年間写経を続けなさい。
 その写経の功徳をもって来年の祥月命日はお供養をしましょう。」
 と光海先生からご指導を頂きました。

 最初の頃は、毎日写経をすることがとても大変でした。
 机に向かい、墨をすり、1枚写経をするのに1時間半ほどかかりました。
 もう80歳も過ぎていますので、集中も続かず、手の震えもあり、
 上手に書くことはできませんでした。

 毎日続けるのはとても無理だと挫折しそうになりましたが、
 それでも続けていくうちに、写経することが少しずつ楽しく思えるように
 なってきたのでした。
 翌年の祥月命日の時は、365枚の写経をお供えしてお供養をお願いしました。

 お供養の後、光海先生から「今回のお供養は、とっても良かったですよ。
 一筋の光が差し込んで、観音様がこのご先祖を霊界に導いてくださる姿が
 はっきりと見えました。
 お供えされた写経は、金色に光輝いていました。
 1年間真心こめて一心に写経されたその真実を、
 観音様はしっかり受け取られました。」と教えて頂きました。
 それを聞いたときは、とてもうれしくて、心が晴れたような思いになりました。

 父の成仏を祈願して毎日続けてきた写経は、私自身の心も成長させて頂きました。
 この経験を通じて、『先祖供養は、お坊さんにだけ頼んで拝んでもらえば大丈夫』
 と思っていたことは間違いで、『本当の先祖供養、それは自分自身の心の真実を
 お供えして、仏様に受け取って頂くことだ』とわからせて頂きました。

 これからも写経を続けて先祖供養に励み、感謝いっぱいの毎日を過ごさせて
 頂きたいと思います。



TOP